ほ乳類の脳が大きくなった理由は、恐竜のような強い外敵から身を守るために、目と耳を発達させてきたからだと言われています。昼間を中心に活動する危険な肉食恐竜達の脅威を避けて夜も活動できるようにと目を発達させ、危険を察知するために耳を発達させました。その結果、脳はどんどん大きくなっていった。つまり、恐竜と同じ時代を生きたほ乳類たちの経験と記憶が私たち人間のDNAに刻まれていると考えられるわけです」(所先生)
恐竜が生きていた時代に、私たち人間の祖先も同時に存在していた──それが、私たち人間の身体にも記憶として刻まれているのだとすれば、それは驚きとともに、ロマンを感じる話ではないだろうか?
ワニが恐竜を食べていた!?
「三畳紀が始まる前のペルム期の終わりに、地球上の生物の8割が絶滅したと言われています。三畳紀に入ると、いっせいに恐竜やほ乳類、ワニ類などが誕生してきますが、そこから、互いの存続をかけた命がけの戦いが繰り広げられていったわけです。この時代のワニの祖先はとても強くて、乾いた大地を走り回り、恐竜と食うか食われるかの覇権争いをしていました。しかし、次第に劣勢となったワニたちは、水辺に追いやられていったのです。ここに展示されている骨格標本を見れば、現代のワニより足が直立していることがわかります。水辺に追いやられていったワニたちは、水中を泳ぎやすいように足を曲げ、腹ばいの姿勢になっていったのでしょう」(所先生)
なるほど~、生物の進化の歴史がわかるとはまさにこのことですね。しかし、まさかワニが恐竜を食べていたとは・・・。ちなみに、私たちほ乳類のなかまであるキノドン類のエクサエレトドンの復元模型も見ることができる。その姿かたちは少し間の抜けたライオンのようだが、顔の配置が恐竜やワニと違い、やはりほ乳類と似ている。所先生によれば、「キモカワイイ」という理由で、最近けっこう人気だそうだ。でも、エクサエレトドンに限らず、そもそも骨格しか見つかっていない化石から、顔の形や皮膚の色や形状まで、どうやって復元しているのだろうか。
「正解がない」から面白い!
「発掘された骨格をベースに、その時代の気候などから推測してデザインされています。たとえば、三畳紀の時代は、地球上の大陸がひとつにつながっていました。大陸の中央部は海の影響を受けにくいため、乾燥した砂漠が広がっていたと考えられています。そんな気候の中で生き延びていくためには、どんな姿かたちをしている必要があったのか、分析しながら復元していくんです。デザイナーの考え方によって復元する形は変わるし、新たな発見があれば大きく変化することもあります。近年では、中国の遼寧省でティラノサウルスの祖先にあたる恐竜に体毛が確認されたことから、ティラノサウルスそのものにまで体毛を生やした復元をすることもあります」(所先生)
つまり、復元された姿かたちには「これが正解」といえるものがないということだ。ちなみに、『地球最古の恐竜展』では、小学生以下の子どもに「恐竜手帳」という冊子が配られているが、わかりやすい解説とクイズが人気で、恐竜展を楽しむツールとなっている。そしてこの冊子には、展示を見ながら気付いたことを自由に書き込める欄が付いている。「この骨は、どうしてこんな形をしているんだろうね?」と、子どもに語りかけながら、親子で一緒に考えてみるのも楽しそうだ。ひょっとしたら、定説を覆すような新たな発見だって見つかるかもしれない・・・。
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