WEDGE REPORT

2017年7月25日

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吉村慎司 (よしむら・しんじ)

フリージャーナリスト・北海道国際交流・協力総合センター研究員

1971年鳥取市生まれ。同志社大学大学院総合政策科学研究科修士課程修了。97年日本経済新聞社に入社し、流通・消費分野を中心に企業取材に従事する。10年にフリーに。11年、露ウラジオストク国立経済サービス大学に短期留学。帰国後は主に日本、ロシア・旧ソ連圏の中小個人ビジネスを取材し各種媒体に寄稿してる。12年春から公益社団法人北海道国際交流・協力総合センター(HIECC)研究員も務める。

AI技術の開発、米マイクロソフトの公式パートナー

シベリアも夏は30度を超える。鉄道駅

 6年半ほど前に数学者たちが立ち上げた「ExpaSoft」はビッグデータの分析、人工知能(AI)のアルゴリズム開発を得意とする企業だ。「仕事の内容は本当に多様。ある電話会社向けには、特定の利用者が競合他社に移りそうかどうかを分析するツールを納品したり、石油の運送会社からは、物流データから業務改善策の提案を求められたりとか。数学の応用で、どんな分析のリクエストにも応えてみせる」。取材に対応した技術管理部長のセルゲイ氏は淡々とそう語る。

ExpaSoftの顔認証デバイス

 筆者が訪問したときは音や画像のセンサーを使った人物認識システムのテスト中だった。この技術は、例えば住人が帰ってくると玄関を開けるなど、いわゆる「スマートホーム」の設備にも使われる。センサーが出力する数値の変化をどう処理して、いかに効率的に人物を見分けるか。同社の場合、声や顔で人を識別する際、サーバーなどの大がかりな装置を必要とせず、スマホのような小さなデバイスだけで処理できるのが強みだという。

ExpaSoftオフィスの窓にペン書きの跡。自由な社風

 顧客はロシア国内だけでなく米国、EUにも多いそうだ。となると、客先を回ったり新規の仕事を取ったりするための営業拠点をモスクワあたりに置き、開発チームがシベリアで自分たちの仕事に専念する形が目に浮かぶ。だが、聞けばそうではなく、約30人の従業員は全員がノボシビルスク勤務。仕事は公式パートナーである米マイクロソフトなどから次々と舞い込むため、あえて営業拠点を開く必要がないとのことだ。経済制裁の影響も特に感じられないという。

 創業した数学者たちは地元ノボシビルスク国立大学の卒業生だ。仕事が増えているため後輩にあたる同大新卒者を積極的に雇い入れており、今従業員の平均年齢は25歳程度。なかには大学で教員をやりながら同社に在籍する人もいる。業績は好調で、直近の売り上げ規模は初年度の50倍だという。

ノボシビルスク一番人気の大型商業施設「ガレリア」

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