イノベーションの風を読む

2017年7月31日

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川手恭輔 (かわて・きょうすけ)

コンセプトデザイン・サイエンティスト

1990年代から、大手メーカーでインターネットサービスの企画・開発・運用を手がけ、自ら立案したグローバルなサービスを複数立ち上げた経験を持つ。その1つは、サービスのデザインでグッドデザイン賞を受賞した。コンピューターサイエンス関連の翻訳本も多数ある。

 7月20日に開催されたSoftBank World 2017で、基調講演に登壇したソフトバンクグループの代表取締役会長兼社長の孫正義氏が語った野望に底知れない不安を感じました。

これまで人間を超える知性は、じっとしているPC、じっとしているスマートフォンに組み込まれていました。それがロボットに組み込まれたときに、われわれと同じように街を歩き始める、走り始める、あるいは空を飛びながら海に潜りながら……巨大なものやマイクロ・ロボット、彼らが超知性を身につけて、クラウドでつながり、リアルタイムで1兆個のモノと通信し合うようになります。彼らはわれわれをはるかに凌ぐ。いまペッパーを馬鹿にしている人は、その進化形に追い抜かれていくでしょう。われわれは追い抜く側にいたい、彼らと一緒に世界を変革して行きたい。ソフトバンクは、情報革命の時代のジェントリになりたいのです。

SoftBank World 2017での孫社長(REUTERS/AFLO)

 ソフトバンクは、昨年の9月に英国の半導体設計大手アーム(ARM Holdings plc)を買収しました。

アームは、IoTの世界で90%のシェアを持っています。世界中のスマートフォンの99%以上にアームのチップが使われているのです。ありとあらゆるモノに、これからアームのチップが入っていくという時代がやってきているのです。ソフトバンクは70億人の70億回線の世界ではなく、1兆個のモノをつなぐ1兆回線をつないでしまいたい。モノとモノが通信し合う、ヒトとモノが通信するところにデータが生まれる。データが生まれるところには、90%の確率でアームのチップがある。そこから生産されるビッグデータを人工知能で解析し、お互いがどんどん賢く鍛えていく、そういう時代を作ろうとしているのです。つまり、わたしはシンギュラリティは必ずやってくると信じている人間であります。

 そして、今年の6月にはロボット開発を手掛けるボストン・ダイナミクス(Boston Dynamics)を、グーグルの親会社のアルファベットから買収することに合意したと発表しています。

スマートフォンと従来の携帯電話が決定的に違うように、スマートロボットと従来の単なる組み立てロボットでは決定的に違う。いま工場で活躍している組み立てロボットは、知恵のないロボットです。人工知能を持っていないロボット、われわれよりも賢くないロボットです。彼らは人工知能を持つことによって、スマートロボットに生まれ変わるのです。スマートロボットはみずからが学習し、みずからが賢くなり、よりスムースによりパワフルに、より優しく人の心までを理解し、みずからが行動する、そういう時代がやってくると私は思います。

 孫社長は昨年のSoftBank World 2016でも、シンギュラリティについて次のように語っていました。

人工知能のキーワードはディープラーニングであり、ディープラーニングのキーワードはビッグデータであると。つまり、データを大量に瞬時に吸い寄せて分析し、そしてみずから学習して思考するということになるのが超知性であります。この超知性の誕生がシンギュラリティであり、シンギュラリティの3つのキーワードというのがAIであり、スマートロボットであり、IoTになるわけであります。この超知性に、大量のデータを、地球上の森羅万象のデータを吸い寄せさせる。そのデータを吸い寄せさせるためには、チップが必要なんです。私はこのシンギュラリティに対する重要なカギはIoTだというふうに思っております。1兆個のチップをこの地球上のありとあらゆるものにばら撒くということであります。

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