世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年8月22日

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 ピッカリング元米国務次官らが、Project Syndicateのサイトに7月19日付で掲載された論説において、先般の米印首脳会談を振り返り、米印関係は安全保障分野で進んでおり、経済分野では立ち遅れているという構造を指摘しつつ、両国関係の将来に期待を表明しています。

(iStock.com/incomible/Yulimuli/Mihai_B/panic_attack)

 最近の米印首脳会談への事前の期待は余り大きくなかったが、両国首脳は、チャレンジを機会に転換する外交の力を示した。

 米印関係は、緊密さの高まりにもかかわらず、相互の疑念があった。トランプ政権は、米国の対印貿易赤字拡大、インド人情報技術専門家が米労働者に取って代わること、インドが気候変動パリ協定を用いて多額の援助を得ようとしているのではないか、などを懸念していた。インド側は、トランプ政権の孤立主義的世界観、特にアジアからの撤退に懸念を募らせていた。 しかし、モディとトランプは、不一致なく良いムードを示し、共同声明では、なぜ米印関係が貴重なのかについて認識が示された。

 インドは、多くの理由で米国にとり重要である。インドは、世界で最も経済成長の著しい経済大国であり、世界最大の中産階級を擁し、間もなく世界最大の人口となる。さらに、インドはインド洋の重要なシーレーンに面している。そして、アジアにおける民主主義の砦である。

 トランプ政権は、アジアにおける急速なパワーシフトが地域の安定に影響を与え得る時期にあって、インドがアジア政策の要となり得ると見ている。インドは米国とともに、台頭する中国に対し建設的に関与し、中国にアジアの平和と安定を維持するよう決定するよう仕向け得る。

 この認識は、これまでの武器売却拡大、合同演習増加、インド洋での協力強化、昨年のサイバーセキュリティ合意に加え、首脳会談で発表された新たな防衛取引にも反映されている。公式声明は、米印がこうした領域で従来の賢明な政策を継続することを示唆している。

 モディとトランプは、パキスタンに過激派の聖域根絶をさらに求めることで、テロとの戦いについての更なる団結を明確に示した。

 しかし、モディとトランプは、貿易、商業的関係については意見の一致を見なかったようである。米印関係では安保防衛が強調される傾向にあったが、両首脳の物の見方は、事態をさらにアンバランスなものにする恐れがある。

 モディとトランプは、製造業主導での国内雇用の拡大に重点を置く、ナショナリストの指導者である。しかし、現代のグローバルなサプライチェーンにおいては、数多くの機会がある。相互の利益となる共通の基盤を見出すには、両国関係の経済的側面を再考する必要がある。

 米印は、労働者のスキルと利用可能な就職口のギャップに苦しんでいる。この点が、労働者訓練と競争力についての対話の出発点となるべきだ。

 米印間でのH-1Bビザなどの問題の克服や、インフラ整備での米印協力の深化が求められる。

 トランプの「アメリカ第一」とモディの「メイク・イン・インディア」の間で相乗効果を得るには、創造力、忍耐、柔軟性、戦略的焦点が必要である。両首脳は、生産性、競争力、イノベーションといった面で、相互に利益となる結果をいかに達成するかという、大局に集中する必要があろう。

 こうしたチャレンジにもかかわらず、トランプとモディの下での米印関係は、予想を上回る強力なスタートを切った。双方は、取引だけに終始せず、互いの将来に投資する意欲を示した。今や、彼らの共同の戦略的ビジョンを発展させ、それを一貫して実行すべき時である。

出典:Thomas R. Pickering & Atman Trivedi,‘Trump’s Surprisingly Strong Start with India’(Project Syndicate, July 19, 2017)
https://www.project-syndicate.org/commentary/trump-modi-meeting-india-us-relations-by-thomas-r--pickering-and-atman-trivedi-2017-07

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