2024年4月17日(水)

Wedge REPORT

2010年9月10日

 衛星測位利用推進センター(SPAC)では、みちびきの利用実証に一般企業の参加を公募。第1次公募に参加した企業は101企業におよんでおり、58のテーマは測量や海洋調査、カーナビゲーションや高速列車の時刻管理精度向上等々、多岐に亘る。「現在すべての応募内容を確認し終えたところで、いずれも実証の趣旨に合致しているため、すべて採用する方向で動いている。これから、第2、第3次公募を行い、もっと多くの企業に参加いただく予定」(同センター桜井也寸史企画管理本部長)。

58テーマの内訳 (SPACの資料をもとにウェッジ作成)
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 これだけ多くの民間企業が参加する形で、衛星利用が推進されることはない。人工衛星が身近な社会に貢献するものとして、期待が高まる。

 日本の宇宙産業の売上げは、1998年の3789億円をピークに規模縮小を見せており、2009年には2560億円である(出典:日本航空宇宙工業会)。これはおおよそアメリカやヨーロッパの3分の1の規模だ。国は、宇宙利用を大きな成長分野として捉え、安全保障や産業への利用が期待できる衛星宇宙産業に力を入れていくべきではないだろうか。

2号機以降の見通しは?

 期待される一方で、みちびきの2号機以降打ち上げは、見通しがたっていない。事業化判断は、あくまで初号機の利用実証結果を見てから、ということである。

 衛星自体は、打ち上げから12月まで技術調整期間にあり、実証開始はそれ以降から始まる。宇宙戦略本部では、年内に準天頂衛星に関する論点を整理しておき、来年早い段階で実証結果に対する評価を行う。もし2号機以降の継続が決まれば、来年8月に提出する2011年度概算要求には、予算を乗せる予定だ。

 だが、このプロセスに問題があると指摘する声がある。

 安全保障の観点から、日本の衛星戦略に関わってきた鈴木一人北海道大学公共政策大学院准教授は、「宇宙戦略は、利用の社会的意味を優先的に考えるべきだ。準天頂衛星システムは、国家インフラとして捉え、利用省庁である国土交通省をはじめ国が旗振り役となって積極的に進めるべき」とし、「みちびきを初号機だけで事業化判断することは極めて困難であり、社会インフラとして日本国民や外交に有用な情報提供を行うことができる。その恩恵は大きく、2、3号機の製造・打ち上げコスト約700億円に見合う成果が得られる」と話す。

ようやく描かれた“利用”へのロードマップ

 社会にとって不可欠なプロジェクトにプライオリティをつけるプロセスを確保することこそ、戦略を実現する第一歩だ。

 そもそも旗振り役となるべき国は、利用に向けた宇宙戦略を、どのように考えているのだろうか。

 今年6月に発表された「新成長戦略」には宇宙分野に関する言及がある。このことは、すでに宇宙は夢と希望だけの世界ではなく、具体的な地上利用に手が届くところにあり、さらには産業振興に貢献する成長分野と位置づけたことを宣言したといっていい。

 内閣官房宇宙戦略本部の國友宏俊参事官は、「これまでの宇宙予算編成は、技術開発や宇宙科学に割かれる部分が大きかった。しかし各国が宇宙産業を拡大しているなかで、これからはわが国に成長をもたらし、“利用”がドライブしていくための宇宙戦略が必要」という。

 宇宙基本計画、宇宙基本法の策定を受け、先の新成長戦略においては、そのロードマップが描かれており、日本が取り組むべき重点分野を挙げている。

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