中国はいま某国で

2010年9月20日

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谷口智彦 (たにぐち・ともひこ)

慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授

明治大学国際日本学部客員教授。2008年7月まで3年間外務省で外務副報道官。元日経ビジネス記者、編集委員、ロンドン外国プレス協会会長。著書に『同盟が消える日』(編訳、ウェッジ)など。(2013年1月末日現在)

 タンザニアの大都市ダルエスサラームの商店街は、今や中国人商人たちに占拠されかねない状況らしく、玩具商などは軒並み中国人になった模様だ。地元には当然ながら不満がくすぶる。

キリマンジャロに中国人を追放?

 「よかろうそれじゃあ中国人をみなキリマンジャロのてっぺんに追い上げたら、それで中国人は来なくなるか?それでも彼らは来る。もうそろそろ現実に適応し、頭を変えるべきだ」と先ごろ中国とアフリカの関係を考える国際会議で語ったのは、タンザニア政府の元高官だった。中国人流入がもたらすマイナス面ばかり見るのをやめ、中国の成長がアフリカに及ぼす巨大な機会をつかまえるべきだという。

 「日本や韓国は、アメリカと組んで成長した。今やタンザニアなど、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国が同じようにやる番。ただし手を組む相手は中国だ。中国と組んで大きく伸びる時だ」─というのが、会議で中国通と称する専門家たちが強調した点だったと、タンザニアの英字紙デイリー・ニューズ(ウェブ)が伝えている。

 記事によるとアフリカ全体と中国の貿易額は、2000年の100億ドルから、09年の1060億ドルに10倍以上伸びた。昨年中国の輸出入銀行は、アンゴラ、コンゴ民主共和国(旧ザイール)、ガーナ向けだけで400億ドルの融資案件を承認した。石油とコバルト、ココアの利権確保のためだ。邦貨にしてみると10兆円とか、4兆円という規模の数字になる。確かに巨大。

 ただし中国人イメージは良くない。悪いからこそ、先の高官がしたような忠告も出るのだろう。

 一方中国はタンザニア沖合いザンジバル諸島に医療使節団を常時送り、住民の保健に貢献していることも同紙は伝えている。トーンは極めて好意的。まさかこの島を、中国は海軍寄港地にする長期プランでも温めているとか?

被災したチリが対中貿易で復活

 貿易の話題ついで、中国の影は中南米でいよいよ濃く長く、欧州の存在をかすませつつあるようだ。

 国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会がこのほど発表したリポートによると、ラ米諸国の対中貿易額は、向こう数年以内にEU諸国との貿易総額を上回る可能性が高い。その上といったら、後は米国がいるだけ。ラ米全体にとって、中国は米国に次ぎ2番目に重要な貿易相手国になるのだという。

 地震で大被害を受けたチリなども、対中貿易で大きく息を吹き返した。同国の中国向け輸出は輸出総額(全世界向け)の実に4分の1以上を占める。銅の対中輸出がそれだけ巨額だからだが、金額にして、今年第1四半期の中国向け輸出は40億ドルとなり、前年同期比98%増とほぼ倍になった。

 ラ米全体の輸出で見ると、前出リポートの予測では米国を向き先地とするシェアは09年の約4割が、20年までに約3割に下がるとか。中国にシェアを食われるからで、目先の勢いは圧倒的に中国の側にある。

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