2024年11月25日(月)

こんな子 こんな時 こんな絵本

2010年9月23日

絵本で経済学入門

 さて、「なぜ働いているのか?」という問いも、返答が難しいものの一つかもしれません。その仕事が好きだから、生きがいを感じているから、ということもあるでしょうが、まずは、生活するための報酬(お金)を得ることが大きいと思います。

 もちろん、世の中お金が全てではありませんが、あまり無頓着なのもやはり困ります。金銭感覚やお金に対する考え方を、どう子どもに伝えるかはかなりの難問と言ってよいでしょう。そもそも、お金は、どうして誕生したのでしょうか。

 森に住むきつねはおいしいぶどうの木を持っていて、毎日それを食べていました。通りかかったたぬきが、ぼくもたべたいなぁと言ったので、一房あげました。翌日、たぬきはお礼にりんごをもってきました。ほかの動物たちにもぶどうをあげているうちに、とうとうきつねは、“ぶどうや”を始めました。すると、たぬきをはじめ他の動物たちも、それぞれお店を始めたので、お店はどんどん増えて、もりのなかに市場ができました。もりの市場には、森の奥や山から、北や南の国からも、みんなが集まってくるようになりました。市場はどんどん大きくなり、にぎやかで、便利になりました。というお話『もりにいちばができる』(玉川大学出版部)は、経済の基本と、町ができていく過程がわかります。そして、最初は物々交換だった市場でのやりとりから、やがてお金(通貨)が考えられたことも察せられます。

 『レモンをお金にかえる法 新装版』(河出書房新社)は、副題に“経済学入門”とあるように、子どもたちが冷蔵庫からレモンを取りだし、レモネードの売店を始めることを通して、経済のしくみと経済学用語に無理なく、楽しみながら触れることができます。私は、この絵本に出会ったとき、大学の授業より良く解る! と思った記憶があり、その感想は今も変わりません。小学生の頃にこの本を読んだ娘は、今でもこの本の記憶が、世の中のしくみを理解するのに役立っていると言ったことがありました。最近は、日本の学校でも金融機関の専門家などが指導者となり、楽しみながらもかなり本格的に、経済や経営のことに接する機会もあるようです。

政治、経済、文化、歴史…
“社会”について学ぶとは?

 現在の経済活動は、環境問題を無視することは出来ません。そして、そのどちらもが、世界規模で複雑になっています。生きる事に密接に関係のある環境問題に関して、私たちが出来ること、しなければいけないことを『ちきゅうのためにできる10のこと』(チャイルド本社)は身近な視点で再認識させてくれます。それは、電気のスイッチを消すとか、水道の栓を閉めるなど、本当に基本的なこと。おはなし会でこの本を読み、「知ってるよ。やってるよ」と元気に答える子どもたちの姿を見たとき、大人こそ見習わなければいけないと、深く反省しました。

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