「お父さん(あるいは、お母さん)の仕事はなあに?」と子どもに聞かれて、きちんと説明できる親は、案外少ないような気がします。子どもたちにも身近な幼稚園や学校の先生とか、お医者さん、あるいは、自宅が仕事場になっている場合はともかく、朝「行ってきます」とでかけて、夜帰ってくる勤めの場合は、本当に難しいです。
子どもが知らない
お父さんの一日
私の父も勤め人、所謂“サラリーマン”でした。子どものころ、朝玄関で見送った父は、仕事にいくことはわかっていましたが、どんなことをしているのかは、なかなか想像できませんでした。そのころ、『おとうさん』(瑞雲舎)のような本があったら、もう少し早く、仕事をすることや働く父に感謝する気持ちも生まれたように思います。この本が最初に出版されたのが25年以上前のため、今とは事情が変わった場面もありますが、そこに描かれているお父さんの一日に、大きな変化はありません。朝家を出て、会社の中で働き、夜家に帰ってくる父さんの姿を、電車や町の風景の中に探すことを楽しみながら、まわりの人や町の様子から社会の変化も感じられます。なにしろ、当時はパソコンも携帯電話もなかったのですから。文章のない絵本です。子どもといっしょに広げたら、自分の言葉で、仕事や働くということについて話が出来るように思います。
子どもが中学生のとき、「職場体験」なる授業がありました。自分が興味のある仕事を実際に体験してみる、というものです。グループを作り、希望する職種・職場を調べ、電話や文書で訪問依頼をし、実際に体験したあとはレポートにまとめる。その過程全てが、実際の社会に触れる学習になるわけです。自分たちの頃にはなかった楽しい授業だな、とうらやましく思いながら、受け入れてくださる職場のみなさんはさぞ大変だろう……と、ありがたく思ったことでした。我が家の娘の行き先は、コンビニ。数時間ほど仕事をしてきた娘のお土産話は、コンビニの裏側を垣間見る感じで、面白かったです。
今は、もっと小さい子を対象にした、テーマパーク的職業体験施設もあり、なかなかの人気のようですね。「なんで、もっと早く出来なかったのよ!」と、対象年齢をオーバーしてしまった娘は残念がっています。『しごとば』(ブロンズ新社)は、絵本で「職場体験」をする感じでしょうか。正・続併せて18の職業とその職場を仔細に、ゆっくり見学することができます。それぞれの仕事が他の人の役にたっている“つながり”も、見所の一つです。