3月31日、欧州議会議員時代の公金横領事件疑惑をめぐるマリーヌ・ルペン国民連合(RN)前党首へのパリ軽犯裁判所の判決が出された。4年間の禁固刑(執行猶予2年)、ルペン被選挙権5年間停止、10万ユーロの罰金刑が言い渡された。

これには「仮執行」宣言が付けられており、刑は即時執行される。したがってルペンが控訴したとしても、控訴後の新たな判決が2年後の2027年の大統領選挙前に出て、しかも判決が覆ることがルペン出馬の条件になる。大変ハードルは高いが、さもなければ司法の壁に阻まれて、最有力者が立候補できなくなる。
今回の判決では、マリーヌはこの公金横領体制の首謀者、資金疑惑の中心人物だと厳しく断じられて、彼女が無罪だとするRN側の主張は通らなかった。党幹部、有力政治家23人にも刑罰が科され、RN政党自身にも200万ユーロの罰金刑が下った。RN解体のための判決といってもよいほど厳しい判決だった。
欧州議員経費の乱用---RNの公私混同の金銭感覚
今回の公金横領疑惑は、前回22年大統領選挙戦の際にマクロン大統領陣営によって暴かれた資金の不正利用が発端だった。父ジャン・マリ・ルペンとマリーヌ・ルペン親子はいずれも欧州議会議員の経験がある。その議員割り当ての活動資金、とくに議員助手の給与が議員活動とは無関係な私生活や大統領選挙のための用途に不正に利用された嫌疑だ。
「不正使用取り締まり欧州事務所(OLAF)」からの情報として同年4月に情報媒体「メディアパート」が公表したところによると、少なくとも、総額61万4880ユーロ(約9000万円)に及ぶ不正使用が摘発され、それはパリ軽犯裁判所で訴追された。
マリーヌ・ルペンには04年~17年欧州議員時代に、13万6994ユーロ、父ジャン・マリは30万3546ユーロ、父の時代の副代表ゴルニッシュが4万3257ユーロ、「国民と自由の欧州極右グループ(ENL)」が13万1089ユーロ、そしてマリーヌの元パートナーのルイ・アリオが2494ユーロを不正使用したというものだった。
OLAFによると、それらは詐欺、不正使用、過剰請求にあたった。インターネット開設料金の事実無根の請求、16年年末会食のためのワインやシャンパンの注文とその大部分が自宅に配送された不正使用、10年金融危機の時期に危機回復のための会合に出席するという理由で、党幹部13人の旅費を不正使用したこと(実際は大統領選挙準備のための会合だった)などがその疑惑だった。
昨年24年11月に検察が5年の被選挙権停止を含む求刑を行っていた。5カ月にも満たない審議で判決が下った。