2025年12月25日(木)

未来を拓く貧困対策

2025年12月25日

 徳島市が生活保護の申請者・利用者に賞味期限を過ぎた備蓄食品を配布し、「体調不良は自己責任」とする同意書に署名を求めていた。批判を受け、市長は謝罪した。

(Halfpoint/gettyimages)

 一方、長野のNPOによる物価高対策での期限切れ食品の配布は、地域の生活困窮者を「救う」事例として紹介されている。なぜ同じ「期限切れ食品の提供」の評価が、不適切と善意の支援に分かれるのか。

 本稿は徳島市の事例を切り口に、矛盾やジレンマを抱えながら支援に取り組む現場の実態を伝える。

徳島市の食料支援はなぜ問題視されたのか

 徳島市は、2023年5月から25年12月1日までの間、生活保護の申請者や利用者ら、その日の食料に困窮する59人に対して、賞味期限が切れた災害備蓄用のパンやアルファ化米、水など計約1100点を配布していた。最長で1年2カ月期限を超過したものが含まれ、配布時には「体調が悪くなった場合は自己責任」とする同意書への署名を求めていた。市は後に「不適切だった」として配布を中止し、遠藤彰良市長は「相談者への尊厳を欠いた行為」と述べて謝罪している(NHK、2025年12月22日)。

 政府は「食品ロス削減推進法」(正式名称:食品ロスの削減の推進に関する法律)に基づき、フードバンク活動を食品ロス削減と食料支援の両面から支援している。企業からの寄附促進、「食品寄附ガイドライン」の策定、フードバンク認証制度、災害用備蓄食品の活用などの取組を進めている。フードバンクの現場では、「提供者の責任」を明確にすることで、食品寄附者である企業や食品を口にする受益者の権利を守る法整備が進む。

 しかし、物価高騰による支援需要の高まりと、企業努力による食品ロスの削減が重なり、需給バランスが崩れつつある。「安全性を担保しながら、求める人すべてに必要な量の食品を提供する」という理想の実現が難しくなってきているのだ。

 これに加えて、「生活保護の利用者に食料支援を行うべきか否か」という制度の運用上で検討すべき点もある。問題を整理し、課題を浮き彫りにすることで、今後の政策への教訓を得ることを目指したい。


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