イラン戦争は2月7日で1週間。トランプ大統領をまんまと引きずり込んだイスラエルのネタニヤフ首相は思惑通りの展開にほくそ笑んでいる。しかし、イランの政権崩壊や民衆蜂起の兆しはなく、早期収拾を画策していたトランプ政権に焦りも。イランはハメネイ師の次男モジタバ師を後継者に決定し長期戦に備える構え。
イランのしぶとさは攻撃を予期し「重層的な」指揮系統を作り上げていたことにある。泥沼化した戦争の今を展望した。
ダメージコントロールも失敗
「これはネタニヤフの戦争だ」。サウジアラビアの元情報長官ツルキ王子は今回のイラン攻撃をこう称した。王子の言葉通り、昨年6月の「12日間戦争」を“中途半端な勝利”として不満を抱えてきたネタニヤフ首相はトランプ大統領をイラン攻撃に引きずり込むことに腐心してきた。
昨年末にフロリダの私邸まで訪ねてトランプ大統領と会談。大統領からイランが軍備増強すれば「イスラエルとともに攻撃する」との言質を引き出した。
イスラエル単独ではイランを圧倒することができないネタニヤフ首相にとっては大きな成果だった。首相がイスラエルの生存権を認めない宿敵をたたく「最後のチャンス」ととらえたのは想像に難くない。
首相は今年に入っても2月11日にホワイトハウスで大統領と会談し、イラン攻撃に向けたダメ押しの打ち合わせを行った。首相を必ずしも信頼していない大統領が心を動かされたのは自らの「不人気ぶり」が理由だった。トランプ関税により米国内の物価が上昇、死亡者まで出した移民政策の失敗、「エプスタイン文書」事件をめぐる批判などで支持率は36%にまで下落していた。
大統領は1月、こうした状況を打破しようとしてベネズエラを攻撃、特殊部隊を送り込んでマドゥロ大統領を拉致することに成功した。イランでも容易に同じことが可能なのではないか。イランの体制を転換すれば、歴代大統領が獲得できなかったレガシー(政治的遺産)を手中にできる。揺れる大統領にネタニヤフ首相が説得を続けた。
しかし、攻撃後も大統領の支持は伸びなかった。ロイター通信の3月1日の世論調査によると、賛成は27%、反対は43%。あのイラク戦争でさえ、開戦から1年半後の時点で、賛成が過半数を上回っていた。トランプ氏は国民の支持を受けずに戦争を遂行する初めての大統領になった。
