2026年3月10日(火)

教養としての中東情勢

2026年3月10日

バシジの暗躍

 トランプ大統領の発言はイランの聖職者政権の体制転換をめぐってもクルクル変わった。攻撃直後は体制転換を目指すとし、国民に武器を取るよう呼び掛けて体制転換を明確な目標としていた。しかし、その後国民に反政府行動の兆しが全くないと分かると、体制転換の方針を断念した。

 「米国やイスラエルと付き合えるなら民主国家でなくても良い」「後継体制には私が関与する」というふうにベネズエラでの政権交代の成功を念頭に場当たり的な発言に終始した。要は「最初は体制転換を狙ったが、国民の蜂起がないので、親米政権なら聖職者体制でもかまわない」ということだろう。

 米紙によると、米国家情報会議が攻撃の1週間前、「体制転換は困難」との報告書をまとめていたという。どだい地上部隊を送らずにイランのような大国の体制を転換するのは無理な話だったようで、「出口戦略」がないまま戦争に踏み切ったことが一段と鮮明になっている。なぜイランの体制は強固なのか。

 もともと官僚制度がしっかりしていたのに加え、最高指導者ハメネイ師も実践したように、攻撃を想定し、政治と軍の指揮命令系統が破壊された場合の後継態勢を「重層システム」としてきちんと決めていた。つまりはトップが殺害されてもナンバー2、ナンバー3に次々引き継がれるような制度を「12日間戦争」の教訓として事前に準備していたということだ。

 ハメネイ師は殺害される直前、自分が亡き後には「臨時評議会」3人による合議制で国政を運営していくことを指示していたし、革命防衛隊や軍も攻撃を受けないよう「基地や本部に集まらない」やり方で指揮する方法を取っている。

 もう1つは国民を監視する民兵組織バシジがしっかり機能していることだ。モーターバイクで神出鬼没にパトロール。市民の行動を監視し、攻撃が始まるとすぐに避難、収まるとまた出てくるといった具合だ。バシジの暗躍が体制を支える大きな力になっていることをトランプ大統領は知らない。

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