「大義なき戦争」という批判が高まった。トランプ氏はイランからの攻撃が切迫していたなどと根拠のない開戦理由を主張したが、国際的な信用は地に落ちた。
政権運営がうまくいかなかった時、ホワイトハウスはダメージコントロールに出るのが常だ。今回も大統領自ら大嫌いなCNNなどと片っ端から電話インタビューに応じ、攻撃に正当性を与えようとした。だが、かえって「自衛権の行使」にはほど遠い国際法違反が浮き彫りになり、墓穴を掘る形になった。
前倒しの総選挙目論む
こうしたトランプ氏を尻目にネタニヤフ首相の支持率は急上昇した。「イスラエル民主主義研究所」が3月3日に行った世論調査によると、なんと82.1%が攻撃を支持した。他の調査でも90%を超える国民の支持を獲得。トランプ氏の状況とは全く対照的な結果となった。
これは最高指導者ハメネイ師を殺害したことが大きい。イスラエルでは10月までに総選挙を実施することが決まっており、ネタニヤフ首相は国民の人気が下がらないうちに総選挙に打って出るのではないかとの観測が高まっている。6月ごろの選挙を見据えているようだ。
汚職の刑事被告人でもある首相はガザ戦争の引き金になった2023年10月のイスラム組織ハマスの奇襲を許した責任を厳しく問われている。戦争が終われば、辞任せざるを得ない。
しかしガザ戦争はトランプ大統領の調停で停戦が続いており、このままでは自分の政治生命が終わってしまう。首相がこう思い極めてもおかしくない。イラン攻撃で再び危機を作り出し、戦争の長期化を狙う理由だ。
イラン戦争の期間について、トランプ大統領は当初2、3日で終わる可能性を示唆、すぐに「4週間~5週間」に変え、現在は「必要ならもっと長く」と長期化の可能性を匂わせてはいる。だが今後、株価が暴落するなど米経済に悪影響が出てくれば、大統領がいつ戦争終結に舵を切るか分からない。大統領にとって11月の中間選挙を有利に運ぶことこそすべてなのだ。
大統領はイランに無条件降伏を突き付けているが、ホワイトハウス報道官は「イランが脅威でなくなったと大統領が判断すれば、事実上無条件降伏となる」と説明しており、逃げ道を用意しているとも受け取れる。今後、ネタニヤフ首相とトランプ大統領との間で、戦争終結に向けた綱引きが始まろう。
首相はなんとしても早期収束の動きをつぶしたい考えだ。イスラエルがイランの聖都コムで開催される最高指導者選任の会議場所を空爆したのも最高指導者の決定を阻止し、米国との交渉が始まらないようにするためだったとの見方も強い。首相は「体制転換を可能にする驚くべき計画がある」と述べ、戦争を一段と激化させる意向を表明した。
