2026年3月10日(火)

トランプ2.0

2026年3月9日

 ドナルド・トランプ米大統領(以下、初出以外敬称および官職名略)はイスラエルと連携して2月28日、大規模なイラン攻撃に踏み切った。トランプのイラン攻撃の目的について疑問符がついている。本稿では、イラン攻撃の隠された目的、出口戦略がない理由および次の日米首脳会談でトランプが要求するものについて考えてみる。

(Manuel Augusto Moreno/gettyimages)

イラン産原油の「ディールのカード」としての力

 トランプは3月2日、イラン攻撃の目的に、①ミサイル能力を破壊する、②海軍を壊滅する、③核兵器を保有させない、④テロ組織への支援を止める、の4つを挙げた。本当にそうだろうか。1つ抜けていないだろうか。

 年初にトランプが斬首作戦を仕掛けたベネズエラとイランという2国を見ると、共通点が浮かび上がる。第1に、両国とも世界有数の産油国である。第2に、いわゆる親中である。

 ベルギーのデータ分析企業ケプラー(Kpler)によれば、中国は昨年、海上輸送で約13.4%のイラン産原油を輸入している。トランプは、イランから中国への原油を止めることができる。一方、中国はベネズエラから3~4.5%ないし6.7 %のベネズエラ産原油を輸入していたと言われている。すでにトランプはベネズエラ産原油を抑えた。

 ということは、トランプは中国がイランとベネズエラから輸入していた原油を最大で合計約20%を止め、中国に打撃を与えることが可能になる。彼は、中国にイラン産とベネズエラ産の原油を米国経由で輸入させるようなシステムを作りたいのだ。トランプの狙いは中国に対して、新たなディール(取引)のカードを手中に入れることだ。

 昨年、中国は米国に対して米国産大豆の不買行動をとり、レアアース(希土類)の輸出規制も実施した。しかも、今年に入り米国内では、米連邦最高裁がトランプ関税を「違憲」とした。トランプは、3月下旬から4月初旬に行われる米中首脳会談を前に中国に対して弱い立場に追い込まれたが、中国に輸出されるイラン産原油をコントロールすれば、強い立場で会談に臨めることになる。

 イラン産とベネズエラ産の原油供給のディールのカードは、中国との交渉の際、力を発揮する。原油供給の確約との引き換えに、11月3日の中間選挙までに中国に米国産の大豆を大量に購入させ、今後レアアースの輸出規制をさせない。中国との間に約束を取り付けられれば、トランプは、中西部のMAGA(米国を再び偉大にする)の農業従事者やレアアースを必要とする業種を含めた有権者に成果をアピールできるのだ。

 ベネズエラ産の原油と同様に、イラン産原油もコントロールして、中国に対するディールのカードにする――これが隠されたトランプの目的ではないだろうか。


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