米国首都ワシントンでトランプ大統領を狙ったとみられる銃撃事件が4月25日夜、発生した。トランプにとって暗殺未遂事件は初めてのことではない。過去の暗殺未遂事件は、トランプの人気にとって追い風となり、特にペンシルベニア州での銃撃事件は、撃たれながらも力強く手を突き上げる映像もあって彼の支持率を上昇させた。
ただ、今回の銃撃事件はさほど追い風とはなっていないように見える。今回の銃撃事件に対する反応から、アメリカ社会の現状を考えてみたい。
事件直後にトランプ大統領は発信
毎年恒例のホワイトハウス記者協会主催の晩餐会で、銃二丁とナイフで武装した男性が、金属探知機の横を猛スピードで走って突破し、晩餐会上に突入しようとした。幸いすぐに取り押さえられ、事件は未遂に終わった。ただ、逮捕までに発砲があり、会場内にもその銃声が聞こえ、正副大統領をはじめ政権幹部が顔を揃える中、一時騒然となった。
トランプは、シークレットサービスに囲まれて壇上を去ったものの、すぐにホワイトハウスで自ら記者会見を行った。ホワイトハウス記者会主催の会ということで担当記者のほとんどは晩餐会に集まっていたため、30分後にホワイトハウスで会見と聞かされて、多くの記者が慌てて会見場に移動した。
トランプは、晩餐会場から着替える間もなく駆け付けた正装した記者団に向かって、シークレットサービスの働きを讃えると共に、アメリカ国民に向かって違いを超えて団結することを訴えた。
トランプは、一夜明けた26日もFOXニュースやCBSテレビのインタビューにも応じるなど精力的に活動し、暴力に屈しない強い指導者をアピールした。暗殺未遂は見方によってはチャンスであり、それを利用しようとしたようにも見える。
「またか」というムード
今回の銃撃事件は、ペンシルベニア州で選挙運動中に銃撃された事件とフロリダ州でゴルフ場に武装した犯人が侵入した事件から数えて主な暗殺の試みとしては3回目になる。これまでの暗殺未遂事件、特にペンシルベニア州の銃撃事件は、選挙運動期間中だったこともあり、また、長らく起きていなかった大統領候補に対する流血の襲撃事件ということもあって、アメリカ社会に衝撃を与え、トランプの人気を後押しするのに役に立った。
ところが、今回はどうも様子が違いそうである。そもそも大統領暗殺未遂事件と言えば大事件である。銃や刃物をもった人物が防衛ラインを突破して会場に迫り、大統領に銃声が聞こえるくらいの距離で発砲したのである。
たしかにどのメディアも、トップでこの事件の第一報を伝えた。しかし、アメリカ社会の反応はそれほど鋭いものではなかったようにみえる。
2024年の暗殺未遂事件の時は、「神に救われた英雄」という言説が、巷に溢れた。一方で、今回は、「またか」というムードが広まっているように見える。なぜだろうか。そのように見える要因を考えてみたい。
