2026年4月30日(木)

トランプ2.0

2026年4月30日

 その中で、キンメルはメラニア夫人に向かって「あなたは、夫を亡くしたばかりの未亡人のような輝きを放っている」と述べた。放送2日後に暗殺未遂事件が起こると、暗殺されかかった大統領の夫人に「未亡人のような」とはなんたる不謹慎ということで、多くの人が噛みついたのである。

 ただ、キンメルのショーの放送は、今回の事件が起こる2日前であり、このショーに犯人が触発されたということもなさそうである。暗殺事件未遂事件が起こって一番驚き焦ったのはキンメル自身ではないだろうか。

 当然トランプはキンメルを批判した。しかし、今回目立ったのはメラニア夫人自身も公に反応したことである。彼女は、キンメルのモノローグはコメディなどではなく、米国の政治的病を深刻化させているとして、「キンメルのような人物に、毎晩私たちの家に侵入して憎悪をまき散らす機会を与えるべきではない。もうたくさんだ」と発信し、キンメルの番組を放送しているABCに対して決断を迫った。

 アメリカ社会の反応は、いつものように大きく割れたものであった。トランプを支持する人たちは、キンメルの感受性や共感力のなさに呆れた。かつてキンメルはトランプ支持者のカーク氏が暗殺された時も、不謹慎な発言をして、一度、番組自体がなくなりかけた過去があるのである。

 トランプにも家族がおり、もし、彼が殺害されるようなことがあればどのような思いをするだろうかということにも思い至らず、それを笑いにしようという態度は、病んでいるという批判が多かった。最近、トランプと意見を異にすることも多い、人気コメンテーターのメーガン・ケリーも今回ばかりは、トランプ一家に心を寄せ、キンメルを批判した。

 一方で、キンメルがトランプをからかうのを毎晩楽しみにしている視聴者の多くは、トランプこそが、共感をもつ心の余裕を失わせるような社会を作り出した張本人であるとして、キンメルを支持しているようにみえる。アメリカ社会の注目は今、大統領暗殺未遂事件そのものではなく、ABCが番組の扱いをどうするかに集まっている。

感覚が麻痺したアメリカ社会

 トランプは襲撃直後のホワイトハウスでの会見で、団結を呼びかけた。これはアメリカ国民の団結というよりも、トランプ支持者の団結を訴えたものだろう。イラン攻撃が長引き、物価高も終わりが見えない今、MAGA派も分断の傾向を強めているからだ。

 感覚が麻痺した社会は、より強い刺激がなければ反応しなくなる。大統領襲撃事件を目の前にしても反応しなくなったアメリカ社会を前にして、トランプはこれからどのような強い刺激を与えていくことになるのだろうか。そして、世界はそれにいやも応もなく付き合わされることになるのである。

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