2026年4月27日(月)

World Energy Watch

2026年4月27日

 イランのアラグチ外相は停戦中のホルムズ海峡開放を宣言したが、トランプ大統領はイラン船舶への海峡封鎖を継続した。

 アラグチ外相は、かつて日本のメディアの取材に応え「日本船は海峡を通過できる」と述べたこともあるが、事実は異なっていた。残念ながら、外相と革命防衛隊との間には考えの違いがあるようだ。

 トランプ大統領はアラグチ外相の発言を真に受けSNSで発信した上で、閉鎖継続を宣言した。加えて、米軍はイラン貨物船を銃撃し拿捕した。イランに対する兵糧攻め効果を強化したいのだろうか(トランプが「ホルムズ海峡封鎖」を表明した理由…イランを“兵糧攻め”に、急がば回れの戦術は成功するか  Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン))。

 解放宣言を受け1バレル当たり100ドルから90ドルまで下落したブレント原油の価格は、また100ドルに戻り、24日には105ドルになった。

(NANCY PAUWELS/pinkomelet/gettyimages)

 イランがホルムズ海峡を開放すれば、原油価格が下落し米国市民を悩ませているガソリン価格も下落に転じる。その動きを止めたトランプ大統領の海峡封鎖継続は、理解しがたい判断だ。米国のガソリン価格もまた上がり始めた。

 海峡封鎖の効果が思ったより大きく、これでイランを追い詰め停戦条件を有利に運ぼうと考えたのだろうか。それとも米国海軍の力を誇示し、イランとチキンレースをしたいのだろうか。

 停戦期限の4月21日にトランプ大統領は「イランが紛争終結に向けた提案をするまで停戦を延長するが、軍に対し封鎖を継続するよう指示した」とSNSに投稿した。やはりTACO(Trump always chickens out-トランプはいつも怖気ずく)だったようだ。

 イランはアラグチ外相をイスラマバードに派遣したが、米国との直接交渉ではなく、パキスタンのシャリフ首相にイランの立場を伝えただけと報道されている。米国交渉団のイスラムバード行きは予定されておらず、直接交渉は未定とみられる。その傍ら、イラン革命防衛隊がホルムズ海峡で5隻を銃撃し、2隻を拿捕した。交渉の行方も、海峡開放も依然見えない。

 ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン教授は、この状況が数カ月続く可能性もあり、不透明感が高い中だが最悪のケースでは原油価格が1バレル当たり300ドルを超えるとの試算も示している。そうなると世界は大混乱だ。

 トランプ大統領がかつて発言しているように、交渉がまとまらないと米国はイランの発電所、インフラを攻撃する可能性がある。戦争がエスカレートすると、トランプ大統領が主張する「イランが石器時代に戻る」だけでなく、イランの反撃が「湾岸諸国を砂漠に戻す」可能性もゼロではない。

 戦争がエスカレートすれば、米国の経済にも株式市場にも大打撃を与え、共和党は中間選挙で敗北するだろう。そうなれば、支持率の低下を示す世論調査をインチキと主張するトランプ大統領は、また不正選挙を声高に訴えるのだろうか。

 戦争がより追い込んでいるのは、イランではなく米国だ。戦争の継続によるエネルギー危機は米国だけでなくアジア、欧州も不況に追い込み、世界経済は大きく低迷するが、もっとも深刻な経済的打撃を受けるのは米国になる。

 米国が期待している湾岸諸国からの巨額の投資が停滞するからだ。アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、サウジアラビアの3カ国だけで500兆円を超える額だ。

 トランプ大統領が、イランの民間インフラを攻撃するとイランの報復を招く。その結果として米国が大きな被害を受けるとトランプ大統領が気付きTACOしてくれればよいが、軍事力で優位に立とうと迷走すると、湾岸諸国に加え米国も当面立ち直れない打撃を受ける。


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