2026年5月7日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年5月7日

 今般のイラン戦争は、AIの発達により戦争の戦い方が大きく変わったことを示す好例となったが、それにとどまらない。AIの発達は、軍事技術と民生技術の相関関係にこれまでにない重要な変化をもたらし、それが国家と国際社会に新たな課題をもたらす要因にもなっている。

(Dragos Condrea/gettyimages)

 4月4日付けのワシントン・ポスト紙の解説記事は、「中国の『民間企業』は、AIを使って作成した米軍関連情報を一般に販売して、事実上イランに有利な情報提供を行っているが、公開情報に基づく民間企業の活動であるとして、中国政府は国家的関与を否定することができる」と報じている。

 同記事が取り上げた中国の「民間企業」による米軍関連施設の情報の販売は、AIの発達が軍事技術と民生技術の相関関係に大きな変化をもたらした一例であるが、そこでは一体何が問題となるのか。以下、この点につき詳述したい。

 まず、軍民関係の変化がもたらす一般的な影響について。軍事技術と民生技術は、互いに影響を受け合いながらこれまでも発達してきたのだが、従来は軍主導で発達した技術を民間が追いかけ、さらに発展させて行くというパターンが多かった。インターネットやGPSなどがその例である。これに対し、今日においては、AIや半導体、宇宙関連技術などに見られるように、民主導で発達し軍がこれを採用しさらに発展させていくという逆転現象が起きている。

 このことは通信、情報、物流等のグローバル化と相俟って、民主導で開発され軍事的に重要な意味をもつ技術や情報が、民間レベルで急速に拡散するという現象を生み出してきた。この場合、民主導で開発される高度技術や情報の商業ベースによる拡散のスピードは速く、政府や国際社会による規制が追いつかないという問題が生じている。

 先に触れた解説記事で言及されている中国の「民間企業」MizarVision社が一般に提供する情報は、単なる衛星画像ではない。同社が提供するデータは画像だけではなく、地形照合を伴う詳細な位置関係、米軍施設の用途(推定を含む)、構造の分析などが含まれている。これらは公開情報をベースにしながら、AIを使うことで軍事利用に役立つ形で加工されたインテリジェンスであり、これこそが問題の本質である。


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