5月に予定されている米中首脳会談。トランプ大統領は、習近平国家主席とどのようなディールを行うのか。地政学ビジネスアナリストの石井順也氏に解説してもらった(インタビューは4月22日に行った。聞き手/構成・編集部〈友森敏雄〉)。
編集部(以下、──) 「イラン戦争」の出口は?
石井 停戦交渉の延長(日本時間、4月22日)をトランプ氏側が一方的に発表している状況だが、難しいのは、ホルムズ海峡の扱いだ。イランは、最大のカードとなった海峡の支配を手放すことはしないだろう。一方、アメリカも退くことはできない。トランプ氏は「逆封鎖」によってイランの石油収入を締め上げるアプローチをとるようになった。その圧力と核開発制限要求の軟化、凍結資産の解除、米軍の地域における増強の縮小などで、イランに譲歩を促すことが予想される。
イランとしては、当初より持久戦を覚悟しており、アメリカの逆封鎖をかわしながら今の状況を続けようとするだろう。中国との関係を考えるとアメリカもイランの石油輸出を完全にとめることは難しい。そうした両者のせめぎ合いの中で、中間選挙に向けて停戦合意を急ぎたいトランプ氏としては、逆封鎖の解除や前述の取引材料を示すことで、事態を収拾しようとするのではないか。
ホルムズ問題は、合意事項の実施に応じて段階的に解除とする可能性もある。また、アメリカが手を出さなければ、事実上、停戦した状態は続く。停戦の合意は限定的で大枠なものにとどめ、重要な問題の詳細は先送りしたまま、結果として停戦した状況を続けることもあり得る。
──トランプ氏にとって、このままでは中間選挙は非常に厳しい。
石井 やはり、イラン攻撃は第2次トランプ政権の現時点での「最大の失敗」と言うことができる。中間選挙で、上下院とも民主党が多数になる「ブルー・ウェーブ」も現実味を帯びてきており、そうなればトランプ政権はレームダックとなる。
トランプ氏の影響力は後退し、次のリーダー選びにも独自の動きが強まるかもしれない。例えばパランティア創業者で、高市早苗首相とも会談したピーター・ティール氏などは、自らと親密な関係にあるヴァンス副大統領がリーダーになることをすでに見据えているだろう。イラン攻撃はトランプ氏の「黄昏」を加速させたといえるかもしれない。
──中国には「敵失」となる?
石井 確かに、漁夫の利を得るという側面もあるが、状況はより複雑だ。中国は、石油備蓄、国内の石炭と再エネの生産能力から、他のアジアの国々と比べればホルムズ海峡の封鎖による悪影響は限定的だが、それでも経済にとって逆風になる。
また、イランとの関係も難しくなっている。友好関係にあったが、今回の戦争でイランを支持することはなく、ホルムズ海峡の封鎖には反対している。トランプ氏は習近平国家主席に対しイランに武器を供与しないよう書簡で求めたところ、供与していないとの回答を得たと述べた。一連の対応はイランからすると「冷たい」と映っているはずだ。
早くこの戦争をやめさせて緊張緩和させたいというのが、中国の本音だろう。実際、パキスタンを促して停戦交渉を進めているし、イランにも直接、停戦を求めている。
一方で、中長期的に見ればプラス面もある。アメリカの行動を問題視している国が大多数なので、中国はアメリカの攻撃は国際法や国際秩序を揺るがすものだと批判することで、ASEAN(東南アジア諸国連合)や、グローバルサウスの国々らの評価を高めることができる。
