2026年5月18日(月)

Wedge OPINION

2026年5月18日

日本にとってのポイント
トランプ後の世界

──米中首脳会談で日本が見ておくべきポイントとは何か?

石井 台湾に対する、アメリカのスタンスが弱まっていないか注目する必要がある。台湾独立を「反対する」とか、「一つの中国」を認めるといった表現になれば、衝撃的だが、台湾問題がほとんど取り上げられない可能性もある。昨年10月に釜山で行われた米中首脳会談がそうだった。取り上げないことは関心の低さを示すことになりかねない。日本としては台湾も含めて、インド太平洋、東・南シナ海、そうした海洋における中国の横暴な振る舞いに対して釘を刺す姿勢をアメリカが示すことを促していく必要がある。

──国内的に支持率が低下し、「関税戦争」も不発。中国がトランプ氏を見限っていることはあるのか?

石井 それほど単純ではないだろう。たしかにトランプ氏は中国のレアアースなどのカードを軽視し、不用意に貿易戦争を仕掛けたことで、その力の限界を露呈することになってしまった。とはいえ技術面でアメリカがはるかに優位に立っていることに変わりはない。トランプ政権はテック界の意向もあり技術輸出規制を緩和しつつあるが、技術面での優位を崩さない方針に揺るぎはない。

 アメリカの指導者の中で、中国にとって与しやすいのはむしろトランプ氏だ。政権内でも議会でも今なお対中強硬論は主流であり、ディールを重視し、中国の政治体制を問題視しないトランプ氏は異質だ。ヴァンス副大統領の対中観はまだ明らかになっていないが、少なくともそのメンターであるティール氏は中国に対して厳しい姿勢を見せている。

 トランプ政権2期目になって、トランプ一族の「ファミリービジネス」と政権との癒着はますます進んでいるように見える。トランプ氏が退任すれば、そこまで露骨な一族支配はないだろうが、それでもテック右派などと政権の緊密な関係がますます強固になっていく可能性は高い。ヴァンス氏はトランプ氏以上にシリコンバレーに近く、大統領になれば、そうした関係が制度化されていくかもしれない。

 トランプ氏の公私混同は属人的な要素が強かったが、その路線が継承されれば、アメリカの政権と経済の関係が構造的に変わっていくことも考えなければならないのかもしれない。

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Wedge 2026年6月号より
国際秩序、瓦解の危機 日本主導で平和の再構築を
国際秩序、瓦解の危機 日本主導で平和の再構築を

ある写真集を手元に置き、時折ページをめくりながら、この原稿を書いている。『ヘルソン―ミサイルの降る夜に』(f/8)─。フォトジャーナリスト・佐々木康氏がロシアの侵攻下にあるウクライナへ二度赴き、撮影した作品だ。 佐々木氏は4月下旬、取材で知り合ったウクライナの兵士に「平和とは何か」を尋ねたところ、こう返されたという。「戦争の間の一時的な休息だ」 さらに、兵士はこう語った。「私たちの本性は、人間が絶えず平和に暮らすことを許さなかった。戦争は繰り返し起こる。私たちの世代は、第二次世界大戦後の長い(あるいは短い)平和な時代を生きることができて幸せだった。今、その時代は終わりを迎えようとしている」 誰しも、この言葉を信じたくはない。だが、この世界から戦争をなくすことがいかに困難であるかも分かっている。そうした〝大いなる矛盾〟の中で、私たちは現下の情勢をどう受け止め、どう考えるべきなのか。そして、日本(日本人)は何ができるのか─。


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