2026年5月12日(火)

解剖:「大きな政府」を好む日本

2026年5月12日

 大型連休中に円が急騰し、政府・日銀が4兆〜5兆円規模の円買い介入に動いた可能性が報じられた。財務当局は介入の有無を明言しない。

政府・日本銀行が為替介入が行ったとみられる時期に、円相場が急騰した(ロイター/アフロ)

 だが本当に問うべきは「介入は効いたか」ではない。円安という“市場の警報”を一時的に黙らせることで、企業や家計の適応が遅れ、「国が何とかする」期待が肥大化する。為替介入は通貨版の「大きな政府」を静かに成立させる。

 大きな政府とは単に歳出規模の問題ではない。国家が本来、市場や社会の自律的調整に委ねるべき領域へ踏み込み、人々の行動変化を遅らせる構造そのものを指す。為替介入はその典型例である。

 加えて見落としてはならないのは、為替介入が「財政支出ではない」という形式によって、政治的な痛みを回避しやすい点である。補正予算のように国会で可視化されず、家計には直接の給付としては見えない。

 しかし、実態としては国家が外貨準備という公的資産を用いて、相場変動リスクを社会全体に肩代わりしている。介入が常態化すれば、公的資産の運用や評価損益の変動が政策運営の影に回り、検証されにくい領域で国家介入が拡張していく。

 しかも介入の効果は恒久的ではない。為替介入は相場の流れを恒常的に反転させる手段というより、急変の速度を鈍らせ、外部環境が落ち着くまでの猶予を作る性格が強い。 その時間で社会が適応しない限り、同じ水準、同じ局面で再び介入が求められる。結果として、国家の関与が例外から常態へと滑りやすい。


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