トランプ大統領が2026年2月28日に開始したイラン攻撃は、1973年に制定された戦争権限法に基づくならば、5月1日に60日間の撤収期限を迎える。イラン攻撃に起因する深刻なインフレやガソリン価格高騰が国民生活を直撃し、国内世論の反発が強まっている。11月に中間選挙を控える連邦議会議員にとってこの状況は看過できず、民主党のみならず共和党の政治家からも、攻撃の見直しを求める声が上がり始めている。大統領がこのような主張にどう応じるかが、注目点となっている。
読者の中には、これまで米国が頻繁に海外派兵を行っていることを考えると、大統領が自由に軍隊を海外派遣できると誤解している人もいるかもしれない。だが、実際には大統領の権限には、合衆国憲法と1973年戦争権限法という明確な国内法上の制約が存在する。
にもかかわらず、大統領の軍事行動については法的枠組みと現実の運用の間に深刻な乖離が存在しており、歴代の大統領も議会の承認を得ることなく武力行使を繰り返し、また、連邦議会も最高裁判所もそれを事実上容認する状況が続いてきた。この問題点が、現在明確に露呈しているのである。
絶対的権力者を生み出さないための枠組み
第二次トランプ政権発足後、トランプ大統領が王になろうとしているのではないかとの疑念がしばしば提起されている。合衆国憲法は、いかなる貴族の称号も授与してはならないと規定している。
25年10月には、「王はいらない(No Kings)」というスローガンを掲げて政権に抗議する集会が米国各地で開かれ、主催者によると700万人近くが参加した。これに対し、王冠を被ったトランプが「キング・トランプ」と書かれた戦闘機を操縦して抗議者に汚物のような液体を投下する生成AIで作られた動画を、トランプ大統領がソーシャル・メディアに投稿した。
また、4月にホワイトハウスは、訪米中の英国のチャールズ国王とトランプ大統領が並んで立つ写真をソーシャル・メディアに投稿し、「2人の王」と書き込んだ。そして同日には、建国250周年を記念し、表紙の裏側にトランプ大統領の肖像が描かれた限定パスポートを発行すると発表したことも、人々に衝撃を与えた。
このような大統領の姿は、米国の建国者たちがまさに懸念していたところである。米国の建国者たちは、大統領の権限の強さについて悩みを抱えていた。ヨーロッパの大国が攻め込んでくる可能性を考えると大統領にある程度権力を集中させる必要がある一方で、君主制への強い警戒心から、大統領に強大な権力を与えることを躊躇したのである。
そこで、大統領に一定の権限を与えるものの、権力分立の制度を導入することで、それに制約を課すという制度が導入された。
