2026年5月2日(土)

キーワードから学ぶアメリカ

2026年5月2日

 今回のイラン攻撃においても、共和党支持層に熱狂的に支持されるトランプ大統領の行動を議会が積極的に制約するインセンティブは乏しかった。中間選挙の前にトランプ支持者の反発を買うリスクを冒したくないのは当然だろう。だが、戦争が長期化し、ガソリン価格高騰やインフレが国民生活を直撃する事態となると、戦争権限法が持ち出され、大統領の行動を是正するための政治的手段として利用されるようになるのである。

イラン攻撃における戦争権限法の解釈と正当化

 今回のイラン攻撃と戦争権限法の関係について整理しておこう。

 まず、連邦議会は宣戦布告も授権も行っていないため、本来、軍の投入はイランによる差し迫った攻撃という緊急事態でなければ違法となる。トランプ大統領は、イランが核兵器を開発しており、ミサイル攻撃の可能性があると主張するが、脅威の存在だけでは差し迫った攻撃とは言えない。

 また、同法は同盟国に対する攻撃への反撃を、大統領単独での軍事行動決定の根拠として認めてもいないため、法的根拠は脆弱である。そもそも米国とイスラエルは同盟条約等を締結していない。

 一方、軍投入前の事前協議義務に関しては、攻撃直前に「ギャング・オブ・エイト」と呼ばれる議会中枢の8人(上院多数党院内総務・少数党院内総務、下院議長、下院少数党院内総務、両院の情報監視委員会委員長と少数党筆頭委員)と面会したことをもって、義務を果たしたと主張する可能性がある。だが、この慣例は主に米中央情報局(CIA)の秘密工作に関する情報共有のものであり、大規模な軍事作戦の協議としては不適切との批判は免れない。

 現在問題になっているのは、第5条で定められた60日間の期限の解釈である。この規定はあくまで緊急事態に一時的に対処するための上限として定められたものだが、トランプ政権を含む歴代政権は、「国家緊急事態を宣言すれば60日間は自由に軍隊を使える権利」と読み替えて行動してきた。この解釈に立ったとしても、作戦が長期化すれば、政権は武力行使を終了させるか、法律を無視するか、あるいは新たな緊急事態を作り出すかの選択を迫られることになる。

 直ちに戦争を終結させるのは容易ではないことを考えると、トランプ大統領は、オバマ政権の前例に基づいて法律を事実上無視するか、イランを刺激してエスカレーションを誘発して緊急事態だと新たに宣言するという危険性が出てくるだろう。


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