2026年6月11日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年6月11日

 2026年5月4日付フィナンシャル・タイムズ社説が、次期国連事務総長の選出について、改革が可能になるまで国連を生かし続けることが重要だ、最善の候補者達が競い合うよう促すべきだと述べている。

(HJBC/gettyimages)

 1945年の国連設立後の最初の60年間、国連事務総長は、世界で最も影響力があり、重要で、時には華やかな地位の一つと見做されていた。冷戦期には、超大国の米ソが、時に国連の方針を踏みにじり、事務総長の訴えを無視することもあった。しかし、国連が世界的危機の時には議論のための不可欠な場であるという共通認識は存在していた。

 しかし、それは、もう遠くなった。現在、第10代事務総長を選出する手続きが始まっているが、これは国連の「不在」が顕著な時期と重なっている。米国が関与した最後の2つの大きな中東での戦争における国連の対応と比較してみれば、それは明白だ。

 2003年に米国がイラク戦争を主導したプロセスの中で、ブッシュ政権は、国連による承認の確保が必要だと考えていた。当時のコフィ・アナン事務総長の反対は、米国にとり大きな障害になった。比べて、今の国連は余りに弱体化し、トランプ政権は、イラン戦争について国連承認を求める必要性さえ感じていない。

 今の事務総長の役割は、報われないものとなっている。株主にあたる国連総会(加盟国)は分裂し、幻滅している。取締役会にあたる安保理の5常任理事国(そのうちの 3カ国は米中ロ)は、自らに都合の良い時にしか国連に耳を傾けない。資金は逼迫し、職員は予算削減と士気低下に絶望している。

 現在の国連の制度は、明らかに時代遅れとなっている。国連は気候変動から戦争に至るまで差し迫った地球規模の課題に対処するための機関として必要だ。

 かかる文脈の中で、次期事務総長の選出は極めて重要である。候補者は、大胆な提案をすべきだ。

 国連は、創設時の最優先任務である平和と安全保障へと再び焦点を絞るべきだ。大国同士の戦争では無視されることもあろう。しかし、スーダン、イエメンやコンゴ等、国連が注力すべき紛争は数多くある。

 また、人道支援の役割も改革すべきだ。肥大化した開発活動の一部は、開発銀行に委ねることもできる。官僚主義の縮小も急務である。


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