東京都北区の区立滝野川第三小学校で、異例の火災事故が起きた。テレビなどで児童が校舎4階の窓の外、幅約80センチのひさしに逃れ、はしご車で救助される場面を目にした人も多いだろう。その姿には、誰もがハラハラしたに違いない。
筆者も「まさか学校でこんなことが本当に起こっているのか」という思いで映像を見つめていた。教員生活40年を超えるが、少なくとも小中学校で、現実に子ども達の命がこれほど危険にさらされる火災を見聞きした記憶がない。
実際のところ、どうなのだろうか。
東京消防庁「令和6年版 火災の実態(確定版)」によれば、都内の学校火災(大学・高校等を含む)の過去10年の年間発生件数は24件から51件の間で推移し、平均すると30件前後にのぼる。しかし、その中身を見ると、大半は燃え広がらないうちに消し止められる小さな火災だ。焼損床面積も、ほとんどの年で数平方メートル以下か、ゼロに近い。
唯一の例外は、2022年に深夜・無人の体育館が電気系統の短絡から約1000平方メートルを焼損した一件だが、それも人的被害はなかった。この10年間、都内の学校火災による死者はゼロ、負傷者も多くは年一桁で、その大半は煙を吸う程度の軽微なものである。
これに対して今回は、授業中の昼間に約200平方メートルまで延焼し、児童・教職員あわせて11人が負傷(骨折を含む)し、4階の児童がはしご車で救助された(被害の数値は報道による)。過去10年の姿とはまるで異なる、異質の火災事故だったと言える。

