2026年9月18日(金)

大膨張する日本の借金

2026年9月18日

 先進国の中でも突出した政府債務を抱える日本。これまでも「財政危機」は叫ばれてきたが、結果、起きていない。それをもって、警鐘を鳴らすほうが「オオカミ少年」だと決めつけるのは早計だ。

(YEARS/GETTYIMAGES)

 これまで、なぜ「債務残高対GDP比」が上昇しても、国債金利が上がらなかったのか。2010年代、財政健全化派が財政規律の重要性を説き、財政出動派が求めるほどには財政出動せず、財政悪化をそれなりに食い止めていたからである。その分、金利上昇圧力は弱められた。要するに、金利が上がらなかったから「オオカミ少年」だったのではなく、しっかり警鐘を鳴らしていたから、金利が言うほど上がらなかったのだ。財政健全化派が財政出動を食い止めていた認識は、高市早苗首相が用いた「長年続いてきた過度な緊縮志向」という言葉に端的に現れている。

 それとともに大きな要因は、日銀買い入れがあったからである。日銀買い入れは、何のために必要だったのか。それは、デフレを止めるためだったからである。通貨価値を適度に落とすことこそ、デフレを止めることにほかならない。

 しかし、26年9月の今日。「もはやデフレではない」。日銀は、国債買い入れの減額を始めた。デフレを止める(これ以上通貨価値を落とす)必要がなくなったからである。日銀が国債を買い入れる必要がなくなれば、民間金融機関が買わない限り、国債価格は下がる。つまり、国債金利は上がる。国債金利が上がっても不思議ではない経済では、後戻りできないほどの財政危機になれば、それはそのまま国民の生活危機につながる。金利が上がるのは、国債だけではないからだ。住宅ローン金利はもとより、企業が借りる金利も上がる。売り上げはほどほどでも収益率が低い企業は、上がった金利が払えず、経営難になる。そこで勤める社員の給料にも差し障る。そして、金利が上がれば、利払い優先の財政運営にならざるを得ない。国民への行政サービスは二の次となる。

 後戻りが可能な今だからこそ、財政再建に向けた一歩を踏み出さなければならない。

 今年初めの衆院選、争点潰しに「消費減税」を打ち出した高市首相。大義なき解散に踏み切ったうしろめたさからか、「責任与党」にとっては「禁じ手」と言える。負けないための口実だった「消費税減税」が、大勝したことで呪縛となったかのようだ。

 高市首相は、選挙前も後も、消費減税に言及する際には、必ず「特例公債(赤字国債)に頼ることなく」と付け加えている。この言葉が緩んだことはない。その点では立派だが、実が伴っていない。どのようにそれが実現できるのか、財政を長年研究してきた筆者ですら、本稿執筆時点(8月末)で、その輪郭すらつかめない。これほど「財源」が五里霧中なのは、日本の戦後財政史上例がない。

 もし赤字国債に頼らざるを得ない形で消費減税を進めれば、22年9月英国でトラス内閣が財源なき減税を打ち出したことが引き金になって国債金利が急騰したように、「日本版トラスショック」が起き、それこそ「Point of No Return」になる可能性がある。

 消費税減税は、物価高対策と位置づけられている。しかし、仮に27年4月に消費減税が実行されても、飲食料品の物価は、税率を引き下げたほど(物価上昇率で7.4%相当)は下がらないとの見方が、経済学者の間では大勢である。高市内閣が消費税減税を閣議決定した後でも、物価は言うほど下がらないとの見方が企業経営者からも出始めている。

 それもそのはず。減税されるのは飲食料品だけである。日常よく買う飲食料品は、必需品が多く価格が高くても買わざるを得ない。逆もそうで、食欲には限界があるから、価格が下がっても消費を2倍にするほどのことはない。小売業者は、価格を下げても需要が増えず利益が減るだけなので、消費者の足元をみて価格をさほど下げない。そうすれば利益が確保できる。


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