まずは私の経歴を簡単に紹介します。鳥取市に生まれ育ち、消防士を経験した後、上京し、デヴィ夫人の芸能マネージャー、歌手、IT企業役員などを務めましたが、子どもが生まれたことを機に食・農への関心を強く抱くようになりました。30代半ばに地元にもどり、2012年に農業法人・トゥリーアンドノーフを創業して以来、農業を続けています。一時は大規模な有機農業を目指したこともありましたが、いまは、鳥取県内で約100ヘクタールの農地を預かり、米、小豆、飼料トウモロコシなどを生産しています。
今回、大きな危機感と、それ以上の可能性を抱いて、この原稿を書いています。なぜなら、日本農業が今、かつてない「大離農時代」の入り口に立っているからです。
この荒波を乗り越え、次世代に持続可能な農業を繋ぐためには、私たちが長年、目を背けてきた「遺伝子組換え(GM)作物」の国内商業栽培という選択肢を、感情論ではなく、「経営」と「安全保障」の観点から真剣に議論すべき時が来ていると考えています。
世界の農場で見えた「不都合な真実」と日本の現在地
ではなぜ、そう考えるようになったのでしょうか。
私は、世界の農業生産者が加わる「グローバルファーマーネットワーク(GFN)」の一員として、世界65カ国以上の農家と交流し、実際に北米や南米、アジアの農場に足を運んできました。そこで見聞きしたのは、日本の農業の常識を覆す光景です。
ブラジルの友人、元農業大臣のアントニオ・カブレラ氏は6万ヘクタールという、日本では想像もつかない規模の農場を経営しています。トウモロコシ、大豆などのGM作物を生産する彼の農場は全て「不耕起農業」です。
不耕起とは、農地を耕さずに栽培する方法です。耕起作業がないため、燃料費や労働時間の削減、土壌侵食の防止、温室効果ガスの排出抑制など、環境負荷の低減と経営安定化につながる農法として、今、注目されている農法です。

