そして、驚くべきは、彼の農場で動く膨大な数の農業機械が、すべて自社で生産したバイオディーゼル燃料で稼働していることです。この仕組みの背景には1970年代のオイルショックがあり、彼はエネルギーの自立こそが経営の根幹だと断言します。
GM作物は、大規模農業だけでなく、アジアの小規模農業でも貢献しています。例えば、フィリピンでGM技術で開発されたBtコーン(害虫を殺す細菌由来の遺伝子を導入した害虫抵抗性の組換えトウモロコシ)の生産が広がったのは、除草剤と殺虫剤の使用量を大幅に減らすことができ、同時に安定した収量が得られ、農家の手取り収入が各段に増えたからです。フィリピンをはじめ多くの途上国では、小規模な農家でもGMコーンの導入で収入は増えています。
翻って日本はどうでしょうか。私たちは多くのトウモロコシや大豆を輸入に依存しています。そのほとんどは海外で生産されたGM作物です。家畜のえさとして、あるいは食用油など加工食品の原料として、私たちはすでに日常的にGM作物の恩恵を受けています。それなのに「国内での栽培」となると、思考が停止してしまう。
「輸入して食べるのはいいが、国内で作るのはダメだ」という奇妙な理屈は、これからの大離農時代において通用するのでしょうか。
大離農時代を救う「不耕起栽培」とGM技術
日本農業の最大の課題は、担い手の急減です。これから少ない人数で、膨大な面積の耕作放棄地や管理農地を維持していかなければなりません。ここで重要になるのが、GM作物の代表的な特性である「除草剤耐性」です。
南北のアメリカ大陸でGM作物が爆発的に普及した理由は、単に「楽をしたいから」ではありません。農地の耕作をベースとした「耕起栽培」が土壌流亡を招き、膨大な燃料と労働時間を浪費する限界に達していたからです。
特定の除草剤を散布しても作物は枯れない除草剤耐性品種は、土を耕さない「不耕起栽培」の再現性を飛躍的に高めました。たとえば、除草剤耐性大豆なら、耕さずに播種でき、雑草が生えてきたら、除草剤を1~2回まくだけで収穫できます。
