2024年12月19日(木)

お花畑の農業論にモノ申す

2024年12月19日

 世界26カ国、約2億ヘクタールの農地で栽培されている遺伝子組み換え(GM)作物。アメリカやブラジルなどの大規模農場で栽培されているイメージがあるが、フィリピンやインドネシア、インドなどアジアの国々では小規模農家による栽培も多い。小規模農家にとっても「農薬の削減」や「収量の増加」など大きなメリットがあるためだ。

(MASH/gettyimages)

 日本はGMのトウモロコシや大豆を大量に輸入しているのに、栽培はしていない。なぜ栽培する農家がいないのだろうか。

GM栽培で子供3人を大学へ

 11月下旬、東南アジアから2人の女性農家が来日した。フィリピンのロザリー・エラサスさん(64歳)とインドネシアのファウシク・レスタリさん(49歳)で、2人ともGMコーンを栽培する地域農業の女性リーダーだ。来日は「遺伝子組み換え作物の映画実行委員会」の招きによるもので、日本でのGM栽培の可能性を探るシンポジウムに登壇しそれぞれの体験を語ってもらった。

シンポジウムで登壇したロザリー・エラサスさん(右)とファウシク・レスタリさん(筆者提供)

 エラサスさんは夫を亡くし、3人の子供を育てるための収入を得ようと就農。2000年に貯金をはたいて1.3ヘクタールの農地を購入し、農業専門学校で農作業の基礎を学んだ。同校ではバイテク農業の講義もあり、GMに興味を抱いたエラサスさんは03年、試験的に害虫抵抗性(Bt)のGMコーンと非GMのコーンの両方を栽培してみた。

 フィリピンでのコーン栽培は害虫との戦いだ。とくにアワノメイガという蛾は最大の敵で、農家はこの蛾を駆除するのに農場を頻繁に見て回り、手で蛾や卵を取り除いたり殺虫剤をまいたりと大変な労力を強いられる。

 GMコーンではこうした手間がいらず、農薬は栽培中に除草剤を1回まくだけ。しかも害虫被害がないことで収量が従来品種の約2.3倍となった。この結果から、エラサスさんは農地すべてでGMコーンを栽培することとし、現在は自身の農地と合わせて約12ヘクタールでGMコーンを栽培している。


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