牛丼チェーン「すき家」の鳥取県内の店舗で今年1月、提供されたみそ汁にネズミが混入し、3月に都内の店舗でテークアウト商品にゴキブリが混入していたことが発覚し、一時全店舗で営業を停止した。保健所で食品衛生監視員として長年勤務していた筆者としては、事件を機会に全店を休業して問題解決を図った点は英断だと考える。
メニューへの異物の混入はあってはならず、常日頃からの衛生管理が必要だ。ただ、そうした管理を徹底しても、どうしても入ってしまうものも存在する。ゴキブリが混入していたからと言ってすぐに健康被害が発生するわけではない。すき家の店舗数(約2000店)を考えると、数店の事例を見て、全店の衛生管理が悪いと判断するのは早計ではないか?
食品の安全を管理監督してきた筆者の経験や、都内の食品衛生監視員からの意見を基に解説してみたい。
飲食店の衛生管理に必要なもの
飲食店の衛生管理で重要なのは、「5S」と言われている。「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「習慣」である。
まずは、要らないものを整理して、使用する器具などはいつも同じ場所に整頓しておき、いつでも清掃しやすくすることが大切である。異物混入になるようなものは、持ち込まないことも求められる。
こうした5Sを実践している代表としてよく語られるのがマクドナルドだ。なるべく同じ配置の店舗を設計して、使いやすく、整理・整頓・清掃しやすい店舗を運営している。同じ配置であれば、店舗を異動してもすぐに作業できるし、整理・整頓されていれば、清掃も短時間に済ますことができるので、従業員にとっても楽であり、経営者にとっても経済的となる。