2025年12月5日(金)

食の「危険」情報の真実

2025年4月16日

「防鼠防虫管理=食品の安全性」ではない

 このような事件が起こると、衛生管理がずさんであるとして、提供される料理の安全性をも批判する声がSNSで広がることも多い。すき家についても、それによって対応を余儀なくされた部分もある。

 筆者は、約40年間飲食店等の衛生指導に当たってきたが、ネズミやゴキブリ等を媒介した食中毒事件の経験はない。一方で、鳥刺しや加熱不十分の牛肉による、カンピロバクターや腸管出血性大腸菌O157による食中毒事件を沢山経験している。

 さらに、カンピロバクターやO157による食中毒では、自己免疫疾患として手足のしびれや筋力低下などを引き起こすギラン・バレー症候群や、全身に小さな血栓ができて重要な臓器への血液の流れが妨げられる溶血性尿毒症症候群(HUS)などを引き起こすこともあり、下肢不随や死亡する事例も報告されている。

 食品によるリスクは、「危害の重篤性×発生頻度」で考えなければならない。このように見ると、ゴキブリ等の混入は生理的には嫌だが、衛生的なリスクは鳥刺しや生焼けハンバーグを食べることより、ずっと低いと考えられる。

 防鼠防虫と食品の安全はイコールではないということを私たち消費者は頭に入れておくことも必要となる。また、こうした「事件」を伝える報道機関においても、食のリスクについて、正しい知識を伝えて、消費者が正しく注意できるようにしてほしい。 

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