2026年2月9日(月)

世界を揺さぶるトランプ・パワー

2026年2月9日

 トランプ大統領といえば、エリート層への反発を巧みに利用し、ブルーカラー層の不満や不安を代弁することで支持を拡大してきた。その米国で今、ホワイトカラーの大量解雇時代が始まりつつある。AIによって多くの仕事が置き換えられると予測される中、人間の手でしか行えないブルーカラー職、しかもエントリーレベルと、高度専門職の隙間を埋める「技術職」の人気が高まりつつある。全米最大の職業訓練校で、アリゾナ州フェニックスに拠点を置くUTI(Universal Technical Institute)の地域責任者、トレーシー・ローレンツさんに話を聞いた。

補修作業の実習を行うUTIの学生。同校には「技術職」を育成するための様々なカリキュラムがある(UNIVERSALTECHNICALINSTITUTE)

 UTIは多くの高校卒業者や転職希望者に実際的かつ専門的な職業知識を身につけさせることを目的に、1965年に設立された。現在は全米10州に15のキャンパスを展開しており、2026年にはさらに2校、27年にも1校を新たに開設する予定だ。

 UTIのような学校が必要とされる背景には、米国が抱える「スキルギャップ」の存在がある。高卒で就職するエントリーレベルの単純労働者、大学や院卒の高度な技術と知識を持つ労働者層との間を埋める「技能労働者」の不足が深刻で、その経済規模は3兆ドル(約460兆円)ともいわれている。

 加えて我が校には多くの企業パートナーが存在し、カリキュラムの内容、必要な設備や材料の提供、さらには在校生に対する有給のインターンシップなども提供している。例えばフォード最高経営責任者(CEO)のジム・ファーレイ氏は、(同社には)「5000人程度の技能労働者が不足している」と語っており、我が校の自動車部門の卒業生の多くがフォード、GM、メルセデス、ポルシェなどの大手メーカーに就職している。

 これまでUTIを卒業した学生は26万人以上に上る。そのうち、5人中4人までが希望の職種に就職し、高待遇を得ている。経済の先行きが不透明な中で、今後5~10年くらいはこうした高校卒業者が選ぶ新たな選択肢として技能労働を目指す人が増えると考えられる。

 UTIの学費は決して安くはない。プログラムによって差があるが、例えば自動車関連だと最大で年間5万ドル程度になり、これは米国の私立大学の学費に匹敵する。しかしUTIのプログラムは政府による学生ローンの対象校であり、そのほかにも様々な奨学金が用意されている。

 我が校独自の奨学金もあり、企業による有給のインターン制度もあって最終的には学生の負担は軽減される。


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