「これは博打ではないか」――。先日開催されたスルメイカの漁獲枠を決めるための意見交換会で、ある漁業関係者から出た言葉である。
水産庁は今、資源状態が極めて悪いスルメイカに関して、ほとんど何の科学的根拠もなく、文字通り「博打」としか言いようのない方法で管理しようとしている。
漁業法改正とスルメイカ
かつては身近な食材で安価な酒の肴だったスルメイカが、今や高級食材になりかけている。漁獲量が壊滅的なほど減少しているからである。
2024年現在の漁獲量は1万9800トン。これは過去最高を記録した1968年の66万8364トンから実に97%の減少になる。
日本では98年から総漁獲枠(TAC)を設け管理してきたが、当初は90年代で漁獲ピークだった96年の漁獲実績(44万トン)に近い45万トンに設定。翌年から03年はさらに増枠、以降は減枠するも漁獲実績とはかけ離れた数字を設定し続け、漁獲規制の体を成していなかった。
漁獲が野放しでは、資源は減って当然である。枠の意味をなさないTACの設定と資源の減少はスルメイカに限るものではなかった。
こうした中、資源の減少という現実を前に、18年に漁業法が抜本改正、20年末に施行され、遅ればせながらMSY(最大持続生産量)という全世界で用いられている科学的概念に基づく資源管理が本格的に導入された。25年漁期には、近年の実際の漁獲量(直近2年で1万数千トン)とも近い、1万9200トンのTACが設定された。ただ、これでも科学勧告からすると倍程度の相当緩めのものである。それほどまでに資源が痛んでいた、ということである。
しかし昨夏、三陸沖などで昨漁期に比べてスルメイカが多く漁獲され、TACを超える恐れが出てきた。事前の取り決めに従い、漁獲を終了させるのが当然である。
ところが水産庁は漁業者や政治家の増枠への要請に応え、2度にわたり漁獲枠を積み増し、最終的に枠は2万7600トンにまで緩められた。これでは枠の意味がない。
しかし話はこれで終わらなかった。この2月の開催された漁業者などを交えた意見交換会で、水産庁は6万8400トンという漁獲枠案を提示した。この10年でこのような量に漁獲が達したことはない。事実上、枠を取り払ってしまったと言える。筆者はこの会議を傍聴していたが、あまりの無茶さに茫然としてしまった。


