2026年2月22日(日)

キーワードから学ぶアメリカ

2026年2月22日

 米国の連邦最高裁判所は2月20日、トランプ大統領による包括的な関税政策は違法で無効だと判示した。9人からなる連邦最高裁判所は現在、保守派が6人、リベラル派が3人と保守派が優位となっているが、3人のリベラル派判事に保守派のジョン・ロバーツ長官、エイミー・コニー・バレット判事、ニール・ゴーサッチ判事が加わって、6対3での判決となった。

(AP/アフロ)

 この判決は、保守派が主導する最高裁がトランプ大統領の行政権の濫用を明確に抑制した点でも特筆に値する。看板政策の法的根拠が否定されたことは政権の求心力を削ぐ可能性がある。これに対し、トランプ大統領は判決の数時間後には判決に賛成した6人の判事を「わが国の恥」「飼い犬」と罵倒するなど司法部門を軽視する姿勢を明確にするとともに、全世界に10%の追加関税を150日間課する布告に署名する措置をとった。

 関税収入は7月に通過した大統領肝いりの税制法案(OBBBA、One Big Beautiful Bill Act)の中心的財源として位置付けられていることもあり、トランプ大統領としては引くことができないのだろう。関税をめぐる問題は、米国のみならず世界に混乱をもたらす可能性が高い。

「世界のリスク」として語られる関税政策

 第二次政権が発足した2025年1月以降、トランプ大統領はあらゆる国からの輸入品に対し、大幅な関税引き上げを行っている。試算によると、トランプ関税の適用前の米国の平均関税率は2.4%だったのに対し、現在の平均関税率は1909年以来の高水準となる22.5%に達するとされている。

 トランプ大統領は、当初は米国の産業保護を名目として関税を活用していた。例えば輸入自動車に対する関税が日本の自動車産業に影響を及ぼしたことは知られているだろう。だが、トランプ政権は徐々に、あらゆる政治目的を実現するために、交渉のための手段として関税を用いるようになった。例えば、デンマークの自治領であるグリーンランド領有をめぐる米国の方針に反発した欧州8カ国に高関税を課すと宣言したことは、世界に衝撃を与えた。

 米国は覇権国として、基軸通貨を安定させるとともに、自由貿易を可能にするための様々な制度、例えば世界貿易機関(WTO)などを設立してきた。しかし、このような状況は完全に終わりつつある。

 こうした政策変更を受けて、毎年世界10大リスクを発表しているユーラシアグループ社長のイアン・ブレマーは、トランプの関税政策を信じがたいほど愚かだと評価している。また、2026年の10大リスクのうち、1位がトランプの政治革命、3位がドンロー主義(トランプ版モンロー主義)、9位が米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)のゾンビ化を挙げている。USMCAはビル・クリントン政権期に結ばれた北米自由貿易協定(NAFTA)がトランプ政権下で改められたものである。トランプ政権の貿易政策に対する疑念が示されているといえる。


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