2026年2月22日(日)

キーワードから学ぶアメリカ

2026年2月22日

 カバノー判事は、口頭弁論時から国家安全保障や外交政策の文脈において大統領権限に制限を課すことに疑問を呈しており、最高裁判事が一枚岩に固まっているわけではない。とはいえ、保守派の判事が優位する連邦最高裁が、大統領権限の拡大に歯止めをかけたことは、注目に値する。連邦最高裁判所は大統領の方針を無条件で承認するわけではなく、三権分立が今でも有効に機能していることを示そうとしたといえるだろう。

それでも関税を課せるロジック

 なお、トランプ大統領はIEEPAではなく他の法律を根拠に高関税政策を継続する可能性を示唆していた。実は米国では、毎年膨大な量の法律が通過している。バイデン政権の2023年に一年間で30本程度しか法律が通らなかったことが話題となったが、それまでの年では一年間で300本近い法律が通過している。

 だが、米国の場合は100%議員立法であることの弊害として、連邦議会議員が法律を通したという功績を誇示するために実効性を伴わない法律を制定することも多い。法律が通った場合でも予算がつけられずに行政部門も執行しない場合も多い。大昔の法律が廃止されることなく残り続けている場合もある。そのような忘れ去られた過去の法律をトランプ政権が活用する可能性もある。

 判決後にトランプ大統領が活用すると宣言したのは、上述の74年通商法の122条である。これは、国際収支の深刻な赤字への対処を目的とし、大統領が最大15%の関税を150日間にわたり発動することを認めたものであり、大統領は24日からの発動を宣言している。

 こちらはIEEPAとは異なり連邦議会による授権が認められたものなので、同判決の内容に抵触するものではない。だが、122条はもともと為替相場の急激な変動に各国と協調して対応するための措置として導入されたものであり、同条を根拠に関税が発動されたことはこれまでない。深刻な国際収支の赤字が生じたかなど、法律上の発動要件を満たしているかが、今後訴訟で争われることになるだろう。

 また、議会が反発すれば、大統領の権限は制約されることになる。そのような問題を回避できれば税収確保という目的にはある程度資するが、IEEPAほどの規模は確保できないのは明らかである。

 トランプ大統領は、自分が任命した判事が多数意見に加わっているにもかかわらず、最高裁を罵倒している。民意と国益を無視しているとして最高裁を批判する可能性が高い。そして、OBBBAの財源を確保するために関税が必要なことを考えると、いずれ違憲判決となることを織り込んだ上で、あえて高関税政策をとり続ける可能性もあるだろう。エプスタイン文書の問題を機に支持者の間でトランプへの忠誠心が低下している現在、その主張がどれだけ支持層に受け入れられるかにも注目したい。

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