米国の特殊部隊と法執行機関が2026年1月3日、ベネズエラで軍事作戦を敢行し、マドュロ大統領とその夫人を拘束してニューヨーク市の連邦政府の施設に収監した。また、トランプ大統領はグリーンランドの領有が米国の国家安全保障上の優先事項であるとし、その目的達成のための方法を検討しているとされている。
マドゥロ大統領の拘束に関してトランプ大統領は、米国内の麻薬問題への対応が主眼だと主張し、逮捕令状が出されていた麻薬の売人を拘束するための法執行任務であって戦争ではないと説明している。だが、法執行に軍を用いるのは米国の基本原則に反しているという指摘もある。
また、ベネズエラを麻薬問題との関連で論じるのは無理がある。今日、米国で問題となっている麻薬は、マリファナとヘロインの主要生産地であるメキシコや、コカインの主要生産地であるコロンビアから来るものが多く、ベネズエラが占める割合は極めて少ない。
一方、グリーンランドはデンマークの自治区である。北大西洋条約機構(NATO)の加盟国で同盟国である国の領土に対して野心を示すことは、今日の国際政治の常識とはかけ離れている。
これらのトランプ大統領の外交の背景にあるのが、一部の論者が「ドンロー主義」と呼ぶ方針だろう。25年12月に公表された第二次トランプ政権の国家安全保障戦略では、西半球を重視することが強調されていた。これは、モンロー・ドクトリン(モンロー主義)に対するトランプの系(Trump Corollary to the Monroe Doctrine)と名付けられている。
「モンロー主義」と一致するのか?
モンロー主義の意味するところは実は明確ではないが、一般的には米国と欧州の相互不干渉主義だとか、西半球からの欧州の排除を謳ったものだと説明される。西半球に競合者が軍事力などの脅威を及ぼす能力を配置したり、戦略的に重要な資産を所有または制御したりすることを否定すると規定されている。
トランプ大統領はケネディ・センターを「ドナルド・J・トランプ&ジョン・F・ケネディ舞台芸術センター」と改名したことからも分かるように、様々なものに自らの名前を冠することを好む。最近では米国外交におけるかつての主要原理とされたモンロー主義にトランプのファーストネームであるドナルドを混ぜ合わせてドンロー主義という表現を用いる人がおり、トランプは自らもそれを口にして好んでいるようだ。
今回のベネズエラに対する対応は、米国の裏庭とも言われる中南米諸国で存在感を増しているロシアや中国に対する牽制という意味があった可能性が高い。また、グリーンランドもデンマーク領とはいえ、西半球に位置すると言えなくもない(実は西半球という言葉に対する明白な定義は存在しない)。
検討する必要があるのは、トランプ政権の対外政策の基本方針と、いわゆるモンロー主義が一致しているかどうかだろう。第5代大統領であるジェームズ・モンローがモンロー主義を表明した1823年と現在では時代状況が異なるため、理念に違いがあるのは当然だとしても、どのように異なっているのかを整理してみる必要があるだろう。
