米国が「アメリカ・ファースト」主義を標榜するトランプ政権下で孤立感を深める一方、中国の「国際主義」が勢いづいている。通商面でも、両国間で保護主義と自由貿易の立場が入れ替わるいびつな状況が現出、わが国含め西側諸国は困惑を隠しきれないでいる。
共和党の伝統に反する姿勢
「われわれは同盟・友好諸国との歴史的絆を強化し、これら諸国への支持とコミットメントを確かなものとする。われわれは再び、自由の模範となり、自由を今は享受できない人々への希望の灯火となるつもりだ」
「自由の敵ども、そしてわが国も間違ってはならない。アメリカは歴史と選択によって世界に関与して続けており、自由を貴ぶパワー・バランスを形成している。われわれは同盟諸国とわが国の利益を防衛していく。我々は傲慢になることなく目的を示し、決意と力を持って侵略と間違った野望に立ち向かっていく」
上記の二つの引用は、レーガン、ジョージ・W・ブッシュ両共和党大統領がそれぞれ1981年、2001年1月20日の就任式で行った演説の一部だ。
二人が、大統領任期を通じ最重要とされる就任演説で高らかにうたったように、伝統的に共和党政権は、内政重視の民主党と比較しても、米国を盟主とする自由主義世界防衛、同盟関係強化にことのほか重きを置いてきた。
ところが、同じ共和党でもトランプ大統領だけは、就任当初から、対外関係へのコミットメントを軽視してきた。
今年1月20日の同大統領就任演説は、そのほとんどを内政問題に費やし、世界に向けた「自由主義の尊重」「同盟関係重視」など、過去の歴代大統領任演説で聞き慣れたフレーズは、驚くことに1時間以上の長広舌の中で一言片句もなかった。
トランプ氏は冒頭、以下のように述べた:
「わが国はこの日を契機に、今後繁栄し、世界中から再び尊敬されるようになるであろう。二度と諸外国から手玉に取られる国にはならない。すなわち私は、トランプ政権期間中の毎日を『アメリカ・ファースト』とする」
演説で、諸外国との関係に具体的に言及したのは、わずかに「中国」「パナマ」両国にすぎず、それも「中国はパナマ運河を運営している。我々は中国に運河を提供したのではなく、パナマに対してだった。われわれはこれを取り返す」とのくだりのみだった。
