2025年12月14日(日)

トランプ2.0

2025年11月25日

北朝鮮との“ディール外交”

 わが国にとってさらに気がかりなのが、今後の朝鮮半島情勢だ。とくに、トランプ氏の北朝鮮との“ディール外交”がある。

 トランプ氏が北朝鮮との取引で最終的に何をねらっているかは、定かではない。しかし、1期目の大統領在任期間中、金正恩総書記とは18年6月シンガポール、19年2月ベトナム・ハノイ、19年6月、朝鮮半島・板門店で、それぞれ会談した。

 このうち1回目の会談では、両首脳は漠然とした表現ながら朝鮮半島の「完全な非核化」を含む包括的合意文書に署名し、トランプ氏は紅潮した表情で「金正恩総書記を必ずホワイトハウスに招くだろう」と報道陣に語っている。

 2回目の会談は、国連安保理決議による北朝鮮に対する制裁解除めぐり双方の主張がかみ合わず、物別れに終わった。

 3回目はトランプ氏が韓国側から板門店の南北軍事境界線をまたいで、現職大統領として初めて北朝鮮側の地に足を踏み入れ、世界を驚かせた。その際、会談内容についての公式文書の発表はなかったが、「段階的な非核化」について話し合われ、トランプ氏は北朝鮮の当面の核保有を容認したとも伝えられる。

 実際、トランプ氏は2期目に入り、とくに最近、「北朝鮮は核保有国」と公言し、内外で物議をかもしている。

 さらに、トランプ氏は去る10月の韓国訪問時に、北朝鮮側に再度入り金恩正氏との会談実現に強い意欲を見せた。結局、金恩正氏側がこの誘いに応じなかったため、4回目の両国首脳会談は実現しなかったが、今後、任期中に北朝鮮側からの「完全な非核化」の口約束と引き換えに、在韓米軍撤退計画を持ち出さないとも限らない。朝鮮半島からの米軍撤退は、中国の思うつぼだ。

 韓国側はこのほかにも、トランプ政権が米ジョージア州内に韓国大手企業「現代」の韓国人従業員300人以上を「不法滞在」を理由に強制退去させるなど、対米関係に神経をとがらせている。

 トランプ氏は2期目に入り、印パ対立でパキスタン寄りの立場を強め、インドとの関係を冷却化させてきた。その結果、中国の増大する脅威を念頭に始まった日米豪印4カ国首脳による「クアッド」対話も凍結状態となっている。

 ブッシュ政権下で国家安全保障担当補佐官を務めたマイケル・グリーン氏は、米雑誌「フォーリン・アフェアーズ」とのインタビューで「アジア各国の間で米外交政策全般に対する不信感が広がっている」と率直に語っている。

 いずれにせよ、台湾情勢といい南北朝鮮関係といい、一貫性のないトランプ政権の“思いつき外交”は、関係各国にとって今後も波乱含みが続きそうだ。

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