2026年1月23日(金)

Wedge REPORT

2026年1月23日

 筆者は2006年から20年間、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科の教授として、様々なスポーツの選手や監督、経営者を指導してきた。昨年は大相撲で2人の平田ゼミの教え子が親方をしている部屋から横綱と大関が誕生した。

24歳の若さで横綱に昇進した大の里。大躍進の背景には科学的な手法を取り入れる二所ノ関部屋の教育体制が関係している(RYAN PIERSE/GETTYIMAGES)

 まずは25年5月の横綱・大の里の誕生である。大の里の師匠、二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)は20年4月に同研究科社会人1年制コースに入学した。大学院の研究生活において親方は毎回の宿題を丁寧にこなし、筆者の想像を上回る勉強をし、「新たな相撲部屋の経営の在り方に関する研究」を書きあげた。本人になぜここまで勉強できるのか質問したことがある。すると親方は「コロナ禍の中で相撲協会から外出禁止令が出ており、家に帰り勉強しかやることがない」と真面目に答えたことが印象に残っている。

 さらに印象的だったのが、二所ノ関親方への「相撲部屋の1日」という宿題だ。ゼミで親方は深刻な表情で問題点を発表してくれた。

 下表のとおり、新弟子は朝の5時30分から稽古が行われる。新弟子の1日は極めて早い一方で、幕下は7時から、関取は8時から稽古場に来て稽古を行い、10時頃には稽古終了となる。これが1つの土俵で行われるのである。多くの部屋では9時頃から親方が稽古場に来るといわれる。つまり、新弟子の稽古に立ち合わない親方が多い。

 新弟子は、7時頃に稽古を終えた後、見学、掃除やちゃんこの用意の時間となる。稽古終了後は番付上位の力士から風呂へ入り、その順で食事を始める。そのため、新弟子たちは、稽古が終わってすぐには風呂へ入らず、まわしの上に浴衣を羽織り、十両以上の力士の食事の給仕を行う。給仕終了後、新弟子たちの風呂および食事の時間となる。

 運動後45分は「食事のゴールデンタイム」と呼ばれ、運動後早めに適切な栄養、とくにたんぱく質や糖質をとることが、疲労回復や成長を促進し、身体のリカバリーを早めるといわれているが、新弟子が食事を食べるのは稽古終了後5時間が経過した、12時30分頃になることである。

 午後は自分たちの食事を終えた後、力士たちの食事を片付け、昼寝と自由時間で過ごし、夕食のちゃんこを食べ、23時には就寝となる。昼寝があるものの、新弟子たちの起床時間は5時である。睡眠により成長ホルモンが分泌する。大谷翔平選手も毎日10時間以上の睡眠を確保することを旨とし、回復と体を大きくすることに注力しているといわれる。


新着記事

»もっと見る