ロシアによるウクライナ侵攻が5年目に突入した。この間、欧米諸国は、ウクライナ侵攻を止めないプーチン政権に前例のない制裁を継続して浴びせた。
米国の法令順守関連のデータベース専門サイト「Castellum.AI」によると、ロシアに向けられた制裁件数は2025年8月時点で2万6665件に及ぶ。イラン向けが6027件であることを踏まえると桁違いの制裁規模だ。
その一方、ロシア経済は25年1%の低成長を記録するも瓦解する兆しはない。ハイパーインフレ、金融・通貨危機、大規模失業などが顕在化する兆候はみられず、むしろロシアの財政・金融当局は、外貨準備高や国民社会福祉基金といったストックベースの経済基盤を「要塞」のように固めながら、プーチン政権によるウクライナでの継戦を中長期的に可能せしめている。これを英国の安保外交シンクタンクChatham Houseは25年9月の論考にて“Fortress Russia economy”―ロシアの要塞経済と呼称している。
巨大市場が資源国を飲み込む
「中国」が現下のロシア経済を貿易パートナーとして支えていることは疑いがない。20年、ウクライナ侵攻前のロシアにとって最大の貿易相手地域は欧州(27カ国)で、ロシア貿易全体の約36~38%を占めた。中国は同18%程度に過ぎなかったが、ウクライナを巡る地政学紛争が一変させた。
欧州経済シンクタンクBruegelの速報値によれば、25年、中国はロシア貿易全体の約35~38%となり、欧州のそれは約10~12%へ急減している。米国シンクタンクAtlantic Councilは24年6月のレポートにて、中国とロシアの貿易は第三国(ベラルーシ、トルコ、中央アジア)を経由した取引を含めると全体の約40~45%に達すると指摘している。
ロシアから中国へ輸出される品目は、原油、ガス(パイプライン、液化天然ガス〈LNG〉)、石炭、金属・鉱物といったエネルギー資源が中心。25年、ロシア産原油の約45~46%が中国に輸出されており、「シベリアの力」ガスパイプラインによるロシア産ガスの中国向け輸出は前年比24.8%増の38.8BCM(10億立方メートル)に拡大し欧州向けを上回った。
他方、ロシアが中国から輸入している品目は、自動車・建設車両、工作機械・産業設備、通信機器・IT製品、家電・衣料・日用品といった工業製品が並ぶ。中国の名目国内総生産(GDP)は約18.7兆ドルであり、これはロシアの名目GDPの約9倍に相当する。中国の人口約14億人はロシアの人口約1.4億人の10倍だ。
ここから観察されるのは、「巨大市場国家(中国)に資源国(ロシア)が飲み込まれる」構図である。ロシアは、中国のサプライチェーンにおいて、上流で安価な資源を提供する存在で、国際経済の条理でいえば「中国経済圏の周辺国」といえる。
