2026年3月4日(水)

プーチンのロシア

2026年3月4日

 ロシアは欧米の制裁により西側市場を喪失しており、中国に頼るほかない。いわゆる中国との「相互依存の罠」に陥っている。ここには、武力を用いずして、非対称な経済上の相互依存関係を利用するしたたかな中国の「地経学」手法が透けてみえる。

 それでは、巨大な対ロシア経済制裁が科されているにもかかわらず、なぜ中国はロシアとの貿易関係を拡大することが可能なのだろうか。これを紐解く鍵は二つある。

「金」を介した決済

 一つ目は、制裁を回避する「資金決済」手法だ。欧米諸国は、経済制裁を通じてロシアを国際金融決済インフラから排除することを狙った。

 ロシアの主要銀行(ズベルバンク、VTB、Gazprombank、VEB等)を対象として、欧州ベルギーに本部が所在するSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除し、米国政府はSDN(Specially Designated Nationals and Blocked Persons List)指定した。これによりドル、ユーロ、円、ポンドといった欧米諸国のハードカレンシーによる取引は不可能となった。

 一方で、ロシアのミシュスチン首相、シルアノフ財務大臣は、ロシアと中国間の貿易決済の既に95%以上は人民元およびルーブル建てに移行していると中国とのハイレベル会合等で度々言及している。両国間の決済は、中国人民銀行が主導する人民元のクロスボーダー銀行間決済システムCIPS(Cross-Border Interbank Payment System)、ロシア中央銀行が運営するロシア版金融メッセージ交換システムSPFS(System for Transfer of Financial Messages)並びに銀行間直接取引が機能しているとされる。

 あるいは両国間では「金」を介した代物決済もなされている。国際通貨基金(IMF)の統計データInternational Trade in Goodsによれば、24年、ロシアにとって第2位の輸入相手国はウガンダで、その取引額は270億ドル。24年のウガンダの名目GDP規模は約540億ドル(世銀データ)、総輸出額は約80億ドル(UNCTADデータ)とされるため、ロシアに対する約270億ドルもの輸出額と整合しない。その内容は、コンゴや南スーダンの「金」がウガンダを通じて再輸出されたもので、金額の乖離はミラー統計の誤謬(ごびゅう)とされる。

 ロシアは、アフリカから調達した「金」を中国とのトレードに用いている。中国税関データを引用する複数の中国メディアは、25年10月に中国は、ロシアからの約9.3億ドル、同年11月にも約9.61億ドル規模の「金」の輸入がなされたと報じた。

 ロシア産の「金」の輸入を欧米の経済制裁は禁じているが、ロシアによる「金」の輸出や第三国での決済を禁じていない。ロシアは「金」を介して人民元を調達し、中国製の機械、電子部品、消費財・軍民両用品を調達している可能性が高い。欧州のシンクタンクRAND Europeは24年9月のレポート“Gold rush How Russia is using gold in wartime”にて、ロシアが制裁下、いかに「金」を準ハードカレンシーとして活用しているか分析している。


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