トランプ政権によるウクライナ戦争終結のための仲介外交は、紆余曲折を経て、今年1月23~24日、ウクライナ・ロシア・米三カ国の代表団がアラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビで初めて一堂に会する協議に結実した。協議自体は、領土問題等を巡って平行線になったものの今後も継続することが決まっている。ウクライナ戦争が、現在、外交的解決に最も近付いていること自体は否定し得ない。
ここに至った理由の一つは、トランプ政権による仲介外交の努力、ある時はウクライナに、またある時はロシアに圧力をかけて、両者を協議の場に引っ張り出したことであり、トランプ大統領の外交スタイルに批判的な者であっても素直に認めざるを得ない。
ただ、それと同時に、侵略するロシアと防衛するウクライナの双方の疲弊、双方の軍が被っている人的被害の大きさも無視し得ない。今回は各軍の人的被害に注目してみたい。
ロシア軍の犠牲
ロシアは、ウクライナに対する侵略戦争を「戦争」とは呼ばずに、欧米にそそのかされているウクライナのネオナチ政府に対する「特別軍事作戦」と呼称し、2日で終わらせると豪語して、22年2月24日に全面的侵攻を開始した。しかしながら、4年の長期にわたっている戦争において、ロシア軍は、米戦略国際問題研究所(CSIS)が今月発表した推計によれば、既に120万人以上の戦死傷者を出している。ウクライナ政府の発表でもロシア軍の犠牲者は、拙文を書いている現在、123万9590人に上っている。
因みに、1979年から89年まで続いたアフガニスタン紛争におけるソ連軍の犠牲者数は、過小評価されていると言われたソ連政府の発表において死者1万4453人、負傷者5万3753人、行方不明者312人であった。当時、2億6244万人の人口を擁し、米国に次いで世界第2位の経済力を誇ったソ連がこの犠牲者数にすら耐え切れず、アフガニスタンから軍を撤退し、その後、この敗戦が一因となってソ連自体が91年末に崩壊したのである。
ソ連の約半分の1億4612万人の人口とソ連時代よりずっと小さい経済規模でしかないロシアにとって、120万人以上の犠牲者が軍、社会、そして国家自体にどれほどのダメージを与えているかは想像に難くない。その証拠にロシアの独立系調査機関レバダ・センターが25年12月に公表した世論調査によれば、66%が和平交渉を支持し、戦争継続の支持は25%にまで低下している。
