人類社会から戦争がなくならない限り、あらゆる時代は全て戦間期だ。しかし20世紀のあの「戦間期」が特別な響きをもって我々に迫ってくるのには、いくつかの理由がある。そのうちの一つは、21世紀の今日の世界の行方を考える時、どこか本質的な類似点があるからであろう。
かつての「戦間期」が行きついた先は、周知のように第二次世界大戦という巨大な破滅的結末だった。そして今、冷戦終焉後の国際秩序の崩壊が唱えられているが、それがかつての「戦間期」と二つの点で本質的な類似性を持っていることが、とりわけ重要なのである。その一つは、両者とも当初より、その秩序の核心部分に大きな欠陥と危うさを抱えるものであったことだ。
両者とも大戦争や長期の冷戦を終えた後の理想主義的なユートピアニズムに彩られてスタートしたが、ヴェルサイユ体制と呼ばれる国際秩序の時代とされた「戦間期」の方は、もともと同体制の根本に敗戦国ドイツへの苛酷な懲罰的処遇を課すという根本矛盾を抱えていたことが、その崩壊に結びついていった。一方、今、「崩壊の危機」が叫ばれる冷戦後の国際秩序は、当初からあった世界の一体化を推進するためにグローバルな介入を推し進めようとする米国の一極主義が覇権の衰退という根本矛盾を来し、国際システムの歴史的な動揺を招いているのである。
国際秩序に永遠はない
「歴史の本質」とは
冷戦終焉が決定的となった1991年のソ連崩壊後、当時のジョージ・H・W・ブッシュ(父)政権下、ときのベーカー国務長官はこんな言葉を生み出した。
サンフランシスコからウラジオストクまで、一つの世界になる──。
この言葉には、ウラジオストクから西へ進み、ユーラシア大陸、大西洋、サンフランシスコに至るまで、米国主導で、国際秩序・政治・経済・価値観などが統一され、グローバルに「一つの世界」が実現するという理想主義のユートピア志向が込められていた。
あれから35年。冷戦終焉以来続いてきた国際秩序は、いま崩壊の危機に瀕し、かろうじて保たれていた「法の支配」も、音を立てて崩れようとしている。時代はまさに、はっきりと暗転の兆候を見せ始めているのである。
