5月9日、今年もロシアで最も重要な祝日、戦勝記念日が祝われた。第二次世界大戦の「大祖国戦争」で、ナチス・ドイツに勝利したことを祝うものだ。首都モスクワの赤の広場では、恒例の軍事パレードが行われた。
しかし、80周年という大きな節目だった昨年よりも規模が縮小するのは当然にしても、今年の戦勝記念日はとにかく地味だった。例年であれば、ロシア自慢の最新兵器がパレードを彩るのに対し、今年は軍人の行進だけ。さらには、最近ウクライナのドローン攻撃に悩まされているロシアだけに、「プーチン大統領が攻撃を恐れて赤の広場に姿を現さないのではないか」といった憶測まで流れた。
最終的には、米国のトランプ大統領の仲介により、時限的な停戦が実現したため、最高指導者不在の戦勝記念パレードという異常事態は回避され、プーチン大統領は最低限の体裁は取り繕った。それにしても、ロシアの強さを誇示するための舞台であるはずの軍事パレードが、今年はむしろロシアの弱さを、そしてプーチンの弱さを印象付けた感があった。
過去の勝利をウクライナ戦争に投影
ロシアの公式イデオロギーによれば、「かつてのソ連は、途方もない犠牲を出しながらナチス・ドイツを倒し、自国のみならず、全人類を魔の手から救った」ということになっている。それが、「そんなソ連、その継承国であるロシアは、戦後世界において特別な権利を有するはずだ」という特権意識に繋がる。ウクライナを支配するという野望も、結局のところは、そうした特権意識に根差している面がある。
2022年にウクライナ侵攻を開始して以降のロシアの戦勝記念日を振り返ると、過去の「勝利」と今日の「勝利」を結び付けようとする狙いが、年を追うごとにはっきりしてきた気がする。今年は特に、大祖国戦争と現在のウクライナ戦争を意図的に接続しようとしていた印象が強かった。
実際、今回の軍事パレードにおいては、ウクライナの前線で戦う各部隊の活躍の様子が映像で流され、その代表者が戦勝記念日の祝辞を述べるという演出があった。筆者が確認した限り、このような演出は今回が初めてのはずである。もちろん、兵器パレードをやらなかったので、その代わりに場を持たせるという目的もあったのかもしれないが、それでもやはり過去の勝利を今日にも投影するという狙いは明白だった。
