米国・イスラエルによるイラン攻撃により、ホルムズ海峡は史上初めて事実上封鎖されるに至った。ロシアによるウクライナ侵攻とそれに伴うロシア産エネルギー資源を巡る欧米とロシアの攻防は、世界を巻き込む「地経学戦争」を引き起こした。それを上書きするような、今回の中東産エネルギー資源の途絶を巡る米国とイランの攻防は、さらなる国家間対立を伴う「地経学戦争2.0」の様相を強めていくだろう。
領土や安保外交上の覇権確保を目的として、ロシアと米国のトップにより開始された武力行使は、エネルギー資源とそのサプライチェーンを巡る各国の経済的攻防へ伝播し、その影響は今なお増幅している。
ロシアのアングルから見れば、イラン戦争は「予期せぬ追い風」に違いない。なぜなら、エネルギー資源、肥料(尿素・アンモニア)、地政学的地位といった複数の要因がロシアに有利に作用するからだ。ここから考察されるロシアの地経学・外交戦略とは何かみていきたい。
さらなるエネルギー高騰の懸念も
まず、エネルギー資源に関するロシアの狙いは明確だ。中東産の原油や液化天然ガス(LNG)の約6~7割はアジア向けであったが、「中東の代替供給国」としてロシアが機能することを実取引にて示していくだろう。
報道によれば、今年3月、インドはロシア産原油の輸入を前月比90%増加させ、日量150万~200万バレルの取引量に戻している。中国のロシア産原油輸入も今年3月、前年同月比で約14%拡大している。
3月にベトナムのチン首相、4月にインドネシアのプラボウォ大統領は相次いでロシアを訪問、プーチン大統領と会談し、ロシア産原油・液化石油ガス(LPG)・ガス取引の供給確保につき合意した。
米国の動向もロシアの動きを後押しする。ガソリン価格の高騰により、今年11月に行われる中間選挙へ影響が出ることを最も恐れるトランプ政権は、一定時点まで船に積み込まれていたロシア産原油・石油製品の取引を一定期間認める制裁緩和を実施した。対ロ制裁の緩和は、油価を決めるマーケットに一つの安心材料を提供することになるからだ。
