次世代光通信技術「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」はAI時代のネットワークを支えるグローバルな重要通信インフラとなりえるのか。4月中旬にオーストラリアのシドニーで開かれたIOWNの推進組織「IOWN Global Forum(アイオン・グローバル・フォーラム)」の年次総会に出席した国内外のキーマン3人に現地で話を聞いた。
AIと量子コンピューターをつなぐ手段へ
IOWNグローバルフォーラム会長(NTTチーフエグゼクティブフェロー)
川添雄彦氏
――IOWNグローバルフォーラムも7年目に入りましたが、新たな成果は。
「3月にスペインのバルセロナで開催された欧州携帯見本市『MWC(モバイル・ワールド・コングレス)』でも発表しましたが、データセンターなどの技術標準化組織であるOCP(オープン・コンピュート・プロジェクト)や、無線通信技術の標準化組織であるETSI(欧州電気通信標準化機構)と協力関係を結べたことは大きな成果だと思います。IOWNを社会に実装するには技術の標準化が必要だからです。
次世代携帯通信規格『6G』にもIOWNの要素が取り込まれようとしています。5G(第五世代通信規格)までは人間が通信の利用者でしたが、6Gはセンサーとセンサー、AIとAIなど装置同士をつなぐ通信手段となります。そこで重要なのは時間の同期がとれることです。IOWNはそうした意味でも重要な技術となるでしょう」
――米半導体大手、NVIDIA(エヌビディア)なども光技術に注目しています。
「米ラスベガスでエヌビディアが開いた国際記者会見でもジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)が『今年は光元年だ』と話していました。これほど光技術が注目されることはなかったと思います。
生成AIの登場により、消費電力の問題に多くの人々が気付いたからです。NTTは長年にわたり光技術を研究してきており、光電融合技術についてもフォーラムを設立した2020年から突き詰めてきましたので、先行的な立ち位置にあります。
光電融合技術については米通信半導体大手、ブロードコムもNTTが持つ小型で超低消費電力の『メンブレン(薄膜)フォトニクス』技術の先進性に気づき、一緒に技術開発することを決めてくれました」
――NTTは光量子コンピューティングにも力を注いでいますね。
「私は光量子コンピューティングこそがIOWNの最終形だと思っています。量子コンピューティングでは米IBMや富士通などは超伝導方式を採用していますが、超伝導が実現する冷却状態をつくり出すには難しいものがあります。常温で動く光量子コンピューティングの方が拡張性にも優れていると思います。
それに量子コンピューターで計算した大量のデータを伝送するには現在の電気通信では無理があり、光技術が必要となります。その意味でもIOWNと光量子コンピューティングの方が相性はいいといえるでしょう」
――IOWNの技術は宇宙空間での通信にも向いていると聞きます。
「宇宙は究極の光が使える空間だと思います。地上には空気があり、光を遮るものがありますが、宇宙にはそれがない。電波は拡散しますが、直進性のある光なら衛星同士を結ぶこともできる。
低軌道衛星などをつないで我々が『宇宙データセンター構想』を進めているのはそうした理由からです。IOWNは地上での通信だけでなく、宇宙空間をもつなぐ通信技術だといえます」
