次世代の光通信基盤として2030年にも実装が期待される「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想」が折り返し地点を迎えた。構想の実現を推進する国際組織「IOWN Global Forum(グローバルフォーラム)」が設立5年を記念し、4月下旬にスウェーデンの首都、ストックホルムで年次総会を開催した。会議は非公開で行われたが、オープニングセッションや対外的な情報発信の場となるイベント「Futures(フューチャーズ)」がメディアにも公開されたことから、会議の様子を現地で取材した。
「IOWNグローバルフォーラムは今年で5周年を迎えました」。イベントが開かれたストックホルムのヒルトンホテルで、フォーラム代表の川添雄彦NTT副社長が開会の挨拶を述べると、約250人の聴衆から大きな拍手が巻き起こった。コロナ禍に設立されたフォーラムは当初、オンラインでスタートし、23年4月に大阪市で初めて対面での総会を開催した。会員数も順調に増え、通信会社や通信機器メーカー、ユーザー企業などメンバー企業は160社・団体を超えている。
IOWNの実装へ3つのPoCと
新たな活用例が登場
IOWNのネットワークは「APN(All-Photonics Network)」と呼ばれ、従来に比べ100分の1の消費電力、125倍の通信速度、200分の1の低遅延という3つの特長がある。2023年に実用化された「IOWN APN 1.0」で高速化と低遅延化にメドが立ったことから、PoC(概念実証)となる3つの活用事例が昨年10月に台北市で開かれた全体会合で示された。「放送局向けの番組リモート制作」「金融機関向けのデータセンターの遠隔配置」「GPU(画像処理半導体)データセンターの遠隔利用」の3つだ。台北市での会合に先立ち、NTTが約3000km離れた台湾の中華電信との間でIOWNによる超高速接続実験に成功したことも、フォーラムの活動に弾みをつけた。
さらにストックホルムの総会では4つ目のPoCともいえるIOWNの新たな活用法が示された。フォーラムのマーケティング運営委員長を務めるスウェーデンの通信機器大手、エリクソンのゴンザロ・カマリロ氏は「IOWNは携帯通信システムのフロントホールにも大きな期待が持てる」と訴えた。フロントホールとは5G(第5世代移動通信システム)などの基地局において制御装置とアンテナを結ぶ光ファイバー回線を指すが、そこにIOWNの技術を応用すれば、通信の大幅な効率化と信頼性の向上が図れるという。