2025年12月5日(金)

Wedge REPORT

2025年5月12日

 問題は実装までにあと5年となったIOWNの技術開発を今後どのように進めていくかだ。携帯技術の標準化団体である「3GPP(第3世代連携プロジェクト)」などと異なり、IOWNグローバルフォーラムは技術の標準化ではなく、技術の普及促進を目的としている。どんなユースケースが考えられるかメンバー間で情報共有を促すとともに、知的所有権(IPR)の相互利用に向けた環境整備などが期待されている。技術ワーキンググループのリーダーを務める川島氏は「こうしたオープンな技術促進組織は数年で立ち消える例が多いが、5年が経過した今もメンバーが増え続け、着実に成果を挙げていることを考えれば、100点評価と言っていい」とフォーラムの活動成果を自賛する。

国際機関による
オープンな技術の標準化も重要に

 ボードメンバーに加わって2期目というKDDIの林通秋氏は「KDDIも前身のKDD(国際電信電話)の時代から光技術に力を入れてきており、その知見を活かす意味でもフォーラムへの参加が重要だと考えた」と語る。「IOWNを広めるには世界の通信会社が参加できるオープンな枠組みにする必要がある」として、フォーラムとは別に国際電気通信連合(ITU)の場で国際標準化に力を入れているという。「フォーラムの参加メンバーも現在は日本企業が多いが、もっと海外企業を増やし、日本仕様と思われないようにする必要がある」と指摘する。

 ノキアの光通信装置部門の責任者、リーブン・レブロー氏は「IOWNは日本や台湾などでは注目されるようになったが、北米ではまだまだ認知度が低い」と指摘する。メンバーの中でも通信機器メーカーなど技術開発を担う企業は熱心だが、サービスを担う通信会社の動きはやや鈍い。通信サービスが固定から携帯へと移行したのに伴い、技術開発の担い手が通信会社から通信機器メーカーへと移ってしまったためだ。ボードメンバーである仏通信大手、オレンジのエリック・アルドワン氏は「通信量が今後10年で5倍から9倍に拡大することを考えると、地球温暖化防止のためにもIOWNの普及が不可欠だ」と訴えるが、世界の大手通信会社が積極的に動き出さなければIOWNの普及は難しいといえよう。

遠隔地で踊るPerfumeのパフォーマンスがIOWNの超高速接続により3次元で視聴できる大阪・関西万博のNTTパビリオン。こうした技術検証は今後も続く(筆者撮影)

 IOWNグローバルフォーラムはこれまでの5年間の道のりで着実に成果を挙げてきたが、経済的価値を勘案した今後の実装を考えると、ビジネス的な技術検証と光電融合デバイスの早期開発が欠かせない。ストックホルムの総会はそうした今後の道程に新たな方向性を示したといえるが、フォーラムの真価が問われるのは今後数年の取り組みにかかっている。IOWN構想はまさに正念場を迎えたといえよう。

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