2026年1月30日(金)

世界の記述

2026年1月30日

 年が明けてからのトランプ大統領の対外攻勢がすさまじい。ベネズエラ奇襲はアメリカ勢力圏の確保のための武力介入であり、グリーンランド領有権の主張は同盟国の領土主権侵犯だ。

スイス・ダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会で、演説したトランプ大統領(AP/アフロ/gettyimages)

 そこには、トランプ大統領の「西半球(中南米地域)」重視へのシフトと欧州諸国への高圧的姿勢、欧州に対する優先順位の後退が見られる。

 なぜ、そのような方向性が明示的に打ち出されたのか。それは、米国の欧州への「優越性(プライマシー)」という意識だ。米国民が持つ意識を歴史からひも解いてみたい。

トランプの〝暴走〟を止める欧州

 1月3日、米軍は約150機の航空機と、米特殊部隊デルタフォースの隊員を投入して、マドゥロ・ベネズエラ大統領公邸を奇襲、同大統領夫妻を拘束し、米国に輸送した。同大統領は数日後には麻薬密輸の容疑で裁判にかけられた。

 その一方でトランプ大統領は、ベネズエラの石油資源の管理と国家運営を米国自身が直接行うと宣言。ベネズエラを支援してきたキューバに軍事的威嚇を伴いつつ、米国が新たに支配下においたベネズエラ産石油供給を継続してほしければ取引に応じるべきだと提案した。矛先は、近年キューバへの石油輸出を増やしているメキシコに対しても向けられている。

 その背景には、歴史的に「アメリカの裏庭」と称せられる「西半球(カナダ、メキシコ、中南米、カリブ海諸国)」を勢力圏として一層強化しようとする意図がある。近年この地域での影響力を拡大させる中国への牽制措置だ。

 他方でトランプの勢力圏拡大はヨーロッパにも及ぶ。1月中旬にはグリーンランドの米国領有をあからさまに主張し始めた。中国とロシアが積極的に進出している北極海における防衛面での米国の安全保障維持がその目的だ。レアメタル埋蔵量が世界で8番目に多いといわれる地下資源へも関心を持っている。

 しかしグリーンランドは歴史的にデンマーク内の自治政府によって運営されている。デンマークや英仏独、ノルウェー、スウェーデン、オランダ、フィンランド欧州8カ国はトランプ発言を主権侵害と非難。トランプはその対抗措置として1月17日、これら諸国に対する追加関税を発表し、諸国は報復関税という形で対抗姿勢を明らかにした。


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