2025年10月末に行われた米中首脳会談は、極めて異例なものであった。最大の特徴は、米中関係における最重要課題となっている台湾問題が公式には議題とならず、協議の内容が経済問題にほぼ限定された点である。
トランプ政権関係者によれば、中国は会談を行う条件の一つとして台湾問題に言及しないことを求め、レアアースの安定供給を望むトランプ大統領が受け入れたという。中国はトランプ政権の相互関税に対抗する措置としてレアアースの輸出管理の強化を打ち出し、米国にとっても無視できない制約要因となっている。そのため、トランプ政権は台湾問題のような政治・軍事的に敏感な議題を避け、中国との経済関係の安定を優先するようになっている。
さらに注目すべきは、この首脳会談の前後にトランプ氏自身がSNSで米中関係を「G2」と表現したことだ。これを受け、日本を含む同盟国の間では、米中が大国同士として利害調整を行い、同盟国の安全保障上の懸念が相対的に後景に退く、いわゆる「頭越し外交」の再来を懸念する見方が広がっている。
こうした空気の中で、11月7日に高市早苗首相が台湾有事は存立危機事態になり得ると国会で発言。日中関係が急速に悪化する中、24日に行われた米中首脳の電話会談では、習近平国家主席は台湾の統一が「戦後秩序の重要な構成要素」だと述べ、トランプ氏は中国にとっての台湾問題の重要性を理解していると応じた。
その直後にトランプ氏は高市首相に電話をかけ、日本側に対中関係で一定の自制を促したとされる。その後も、米国政府高官は日米同盟の維持と米中関係の安定を矛盾しないものとする発言を繰り返している。
